皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)とは
自分で除去すると皮膚にダメージを与えてしまい、炎症や細菌感染を起こしたり、傷跡や色素沈着が残ったりする恐れがあるため、皮膚科専門クリニックでの摘除がオススメ。
稗粒腫(はいりゅうしゅ)は、皮膚にできる直径1〜2mm程度の白っぽい小さなブツブツ(丘疹:きゅうしん)で、特にまぶたや目の下など、顔の周りによく見られます。見た目が穀物の「稗(ヒエ)」に似ていることから、この名前が付けられました。触ると少し硬く感じるのが特徴です。
この小さなブツブツの正体は、皮膚の表面にある角質(ケラチン)が毛穴の中に詰まり、袋状に溜まったものです。脂肪の塊と間違われることもありますが、実際は角質の塊なのでご安心ください。稗粒腫は、良性の皮膚のできものであり、痛みやかゆみなどの症状を伴うことはほとんどありません。しかし、見た目が気になるという理由で受診される方が多いです。
稗粒腫は、赤ちゃんから大人まで幅広い年齢層に見られます。特に新生児に多く見られますが、ほとんどの場合は自然に消失します。一方、大人にできる稗粒腫は自然に消えることは少なく、一度できると残ってしまうことが多いです。
放置しても健康上の問題はありませんが、無理に自分で潰そうとすると、皮膚を傷つけたり、炎症や感染を引き起こしたりするリスクがあります。また、誤って潰しても中身が完全に排出されず、また再発してしまうこともあります。気になる場合は、早期に皮膚科専門医にご相談いただくことが、きれいに治すための第一歩です。
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稗粒腫の主な原因と誘発要因
ポイント
稗粒腫ができる原因は、完全に解明されているわけではありませんが、いくつかの要因が関連していると考えられています。大きく分けて、「原発性」と「続発性」の2種類があります。
主な原因
原発性の稗粒腫(先天的な要因や、原因不明のもの)
胎児期に皮膚の構造の一部が変化して袋状のものが作られ、そこに角質が溜まることで発生すると考えられています。
原因がはっきりしないまま、自然に発生することもあります。
肌のターンオーバー(新陳代謝)の乱れが関連しているという説もあります。通常、古い角質は自然に剥がれ落ちますが、このサイクルが乱れることで角質がスムーズに排出されずに溜まってしまうことがあります。
続発性の稗粒腫(後天的な要因や、皮膚の損傷によるもの)
・皮膚の損傷や炎症:
やけど、切り傷、擦り傷、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎、水疱瘡の跡など、皮膚がダメージを受けて修復される過程で、稗粒腫ができることがあります。皮膚の組織が破壊され、治癒する際に角質が閉じ込められてしまうためです。
・外部からの刺激:
紫外線による肌のダメージ、摩擦、化粧品の刺激などが原因となることもあります。特に、目の周りなど皮膚が薄く、デリケートな部位にできやすいのは、これらの刺激を受けやすいことも一因と考えられます。
・皮脂腺の閉塞:
皮脂腺の出口が詰まり、皮脂や角質が固まってしまうことも原因となることがあります。
誘発要因
・乾燥:
肌が乾燥していると、皮膚のバリア機能が低下し、ターンオーバーが乱れやすくなります。これにより、角質がうまく剥がれ落ちずに溜まりやすくなることがあります。
・過度なスキンケアや不適切な化粧品:
油分の多いクリームや、毛穴を詰まらせやすい化粧品の使用、また、肌をゴシゴシ擦るなどの摩擦は、皮膚に負担をかけ、稗粒腫を誘発することがあります。
・体質:
特に原因がなくても、稗粒腫ができやすい体質の方もいらっしゃいます。
・汗をかきやすい:
汗を多くかく人も、角質が詰まりやすくなる傾向があると言われています。
稗粒腫は、ニキビや吹き出物とは異なり、炎症を伴わないことが多い良性のできものです。しかし、「これは何だろう?」と不安に感じたり、見た目が気になる場合は、自己判断で解決しようとせず、皮膚科専門医にご相談いただくことが大切です。
稗粒腫の治療法
主な治療法
稗粒腫は自然に消えることが少ないため、見た目が気になる場合は皮膚科での除去が推奨されます。ご自身で無理に潰そうとすると、皮膚を傷つけたり、感染や色素沈着の原因になるリスクがあるため、必ず専門医にご相談ください。
当クリニックでは、皮膚科専門医の院長が患者さんのお肌の状態を丁寧に診察し、稗粒腫の種類や大きさ、部位に合わせて最適な治療法をご提案しています。特にデリケートな目の周りの稗粒腫も、安全かつきれいに除去できるよう、細心の注意を払って施術を行います。
圧出法(穿刺・内容物除去)
・方法:
最も一般的な治療法で、小さな専用の針やメス(医療用の鋭利な刃物)で稗粒腫の表面にごく小さな穴を開け、そこから中身の白い角質の塊を専用の器具(コメドプッシャーなど)で押し出して除去します。
・麻酔:
通常は麻酔なしで行いますが、痛みに敏感な方や、数が多い場合、デリケートな部位の場合は、塗るタイプの麻酔クリームを使用することもあります。
・治療時間:
稗粒腫の数や部位にもよりますが、数分で終了することがほとんどです。
・術後:
施術直後は、除去した部分がわずかに赤くなったり、点状の出血が見られますが、通常は数日で落ち着き、傷跡もほとんど目立たなくなります。洗顔やメイクは当日から可能なことが多いです。
炭酸ガス(CO2)レーザー治療
・方法:
炭酸ガスレーザーを用いて、稗粒腫を蒸散させ、内容物を除去する方法です。特に数が多い場合や、よりきれいに除去したい場合に検討されることがあります。
・麻酔:
局所麻酔を使用します。
・術後:
レーザーの種類や深さにもよりますが、赤みや軽いかさぶたができることがあります。数日〜1週間程度で治癒することが多いです。この治療は、自費診療となる場合があります。
治療を受ける上での注意点
・痛みについて:
圧出法では、針を刺す際にチクッとした軽い痛みを感じることがありますが、麻酔をするほどの強い痛みではありません。
・傷跡について:
ごく小さな穴を開けるだけなので、傷跡はほとんど残りませんが、体質によっては一時的に色素沈着が起きたり、ごくまれにわずかな凹みが残ることがあります。
・再発について:
稗粒腫は体質的にできやすい方もいらっしゃるため、除去しても別の場所に新しくできたり、同じ場所に再発したりすることがあります。その場合は、再度治療を行うことが可能です。
当クリニックでは、患者さんの不安に寄り添い、治療のメリット・デメリットを丁寧に説明した上で、ご納得いただいてから治療を進めます。稗粒腫は諦める必要はありません。気になる白いブツブツでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
日常生活でできること・セルフケアのポイント
具体的な対策
稗粒腫は、一度できてしまうと自然に消えることが少ないですが、日常生活での適切なスキンケアや生活習慣の改善によって、新しい稗粒腫ができるのを予防したり、肌全体の健康を維持したりすることは可能です。
適切な洗顔と保湿
・洗顔:
肌に優しい洗顔料を選び、よく泡立ててゴシゴシ擦らず、泡で優しく洗うようにしましょう。特に目の周りなどデリケートな部分は、指の腹でそっと撫でるように洗ってください。ぬるま湯で十分に洗い流し、洗顔料が残らないようにします。
・保湿:
洗顔後はすぐに化粧水で水分を補給し、乳液やクリームで油分を補って水分の蒸発を防ぎましょう。稗粒腫ができやすい方は、油分が多すぎるものよりも、さっぱりとした使用感の保湿剤を選ぶのがオススメです。セラミドやヒアルロン酸など、肌のバリア機能を高める成分が含まれたものを選ぶと良いでしょう。
肌を清潔に保つことで毛穴の詰まりを防ぎ、適切な保湿は肌のバリア機能を正常に保ち、ターンオーバーを整える助けになります。これにより、古い角質がスムーズに排出されやすくなります。
紫外線対策の徹底
一年を通して紫外線対策をしっかり行いましょう。外出時は、日焼け止めを塗るだけでなく、帽子や日傘、サングラスなども活用して、物理的に紫外線を遮断しましょう。特に目の周りはデリケートなので、UVカット機能のあるサングラスが効果的です。
紫外線は肌にダメージを与え、ターンオーバーを乱す原因となります。これにより、稗粒腫ができやすくなることがあります。
肌への刺激・摩擦を避ける
肌、特に目の周りを不必要に擦ったり、刺激を与えたりしないようにしましょう。慢性的な刺激や摩擦は、皮膚の炎症やダメージを引き起こし、稗粒腫の発生や悪化に繋がる可能性があります。
・クレンジング・メイク:
アイメイクを落とす際は、専用のリムーバーを使い、擦らず優しくなじませるようにしましょう。メイクアップ時も、ブラシやチップで優しく塗布し、力を入れすぎないように注意してください。
・タオル:
洗顔後のタオルドライは、ゴシゴシ拭くのではなく、清潔なタオルで水分を優しく吸い取るようにしましょう。
・眼鏡・コンタクトレンズ:
眼鏡が肌に擦れたり、コンタクトレンズの着脱時に目の周りを強く触ったりしないよう注意しましょう。
生活習慣の見直し
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。ビタミンA、C、Eなど、肌の健康をサポートする栄養素を積極的に摂取しましょう。睡眠不足やストレスは肌のターンオーバーを乱す原因となるため、規則正しい生活を心がけ、ストレスを上手に解消することも大切です。
健康的な生活習慣は、肌のターンオーバーを正常に保ち、肌の抵抗力を高めることで、稗粒腫の予防だけでなく、肌全体の健康維持に繋がります。
これらのセルフケアは、稗粒腫の予防に役立つだけでなく、美しく健康な肌を保つ上でも非常に重要です。しかし、すでに稗粒腫ができてしまっている場合や、ご自身でのケアに限界を感じる場合は、無理をせず、早めに皮膚科専門医にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
稗粒腫は自分で潰してもいいですか?
自分で稗粒腫を潰すことは絶対に避けてください。無理に自分で潰そうとすると、皮膚を傷つけてしまい、雑菌が入り込んで感染を起こしたり、色素沈着や傷跡が残ったりするリスクがあります。また、完全に内容物を取り除けないと、再発の原因にもなります。気になる場合は、必ず皮膚科を受診し、専門医による処置を受けてください。
稗粒腫は眼科でも診てもらえますか?
はい、稗粒腫は皮膚科だけでなく、眼科でも診てもらえることがあります。特に目の周りの稗粒腫で、数が少なければ眼科で処置してもらえる場合もあります。ただし、数が多かったり、まぶたのきわなどデリケートな場所にある場合は、皮膚科専門医の診察・処置がより適切です。どちらを受診するか迷う場合は、まずは当クリニックのような皮膚科にご相談いただくことをおすすめします。
稗粒腫は一度取っても再発しますか?
はい、稗粒腫は一度除去しても再発する可能性があります。特に稗粒腫ができやすい体質の方や、原因となる外的要因(摩擦や紫外線など)が改善されない場合は、別の場所に新しくできたり、同じ場所に再発したりすることがあります。しかし、再発した場合でも、再度除去することが可能です。定期的に皮膚の状態をチェックし、気になる稗粒腫が見つかった場合は、その都度ご相談ください。
稗粒腫の除去後、日常生活で注意することはありますか?
稗粒腫の除去後は、ごく小さな傷ができますが、通常は数日で治癒します。施術直後は、わずかな出血や赤みが出ることがありますが、すぐに落ち着きます。治療当日から洗顔や入浴、メイクも可能なことが多いです。ただし、除去したばかりの部位をゴシゴシ擦るなどの刺激は避け、清潔に保つようにしてください。医師から処方された軟膏がある場合は、指示通りに塗布しましょう。心配なことがあれば、遠慮なくご質問ください。
稗粒腫の予防のためにできることはありますか?
稗粒腫の根本的な原因はまだ完全には解明されていませんが、予防策として日頃のスキンケアと生活習慣の見直しが重要です。具体的には、肌を清潔に保ち、適切な保湿を行うこと、そして一年を通して紫外線対策を徹底することです。また、肌への過度な摩擦や刺激を避ける、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスの軽減なども肌のターンオーバーを正常に保ち、稗粒腫の発生を抑えるのに役立ちます。
稗粒腫を放置しても大丈夫ですか?
稗粒腫は良性のできものであり、放置しても健康上の大きな問題になることは少ないです。痛みやかゆみなどの症状もないため、無理に治療する必要はありません。しかし、見た目が気になる、または数が増えてきた場合は、ご自身で判断せずに皮膚科専門医にご相談ください。無理に自分で潰そうとすると、感染や色素沈着などのトラブルに繋がりかねません。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況の場合は、自己判断せずに、お気軽に当クリニックにご相談ください。
稗粒腫ができていて、見た目が気になる
稗粒腫の数が多くて困っている
自分で潰そうとして、肌を傷つけてしまった
稗粒腫の周りが赤く腫れている、痛みがあるなど、炎症を起こしている可能性がある
ご自身で稗粒腫かどうかの判断がつかない
まぶたや目のきわなど、デリケートな場所に稗粒腫ができた
稗粒腫の予防法や、日常生活でのケアについて詳しく知りたい
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稗粒腫は、専門的な知識と技術を持った皮膚科医が安全かつきれいに除去できます。無理に自分で対処しようとすると、かえって肌トラブルを招く可能性もあります。
「こんなことで受診していいのかな」「稗粒腫かどうか分からないけど、このブツブツは何だろう?」など、どんな些細なことでも構いません。当クリニックには皮膚科専門医が常駐しており、患者さんの肌のお悩みに寄り添い、丁寧な診察と最適な治療計画をご提案いたします。気になる稗粒腫でお悩みでしたら、どうぞお気軽にご相談ください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医