皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
ケロイド・肥厚性瘢痕とは
ケロイドは自然に治ることはないが、肥厚性瘢痕は数か月から数年で目立たない傷跡(成熟瘢痕)に変化することが多い。
ケロイドと肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)は、どちらも傷が治る過程で、皮膚が赤く盛り上がって硬くなる状態を指します。体への悪影響はなく、がん(悪性腫瘍)に変化することはありませんが、見た目の問題や、かゆみ、痛み、引きつれ感などの症状を伴うことがあり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。
両者とも似たような見た目をしていますが、その性質には大きな違いがあります。
・肥厚性瘢痕:
・原因:傷が治る過程で、過剰に線維組織(コラーゲン)が作られることで生じます。
・特徴:傷の範囲内に盛り上がりがとどまり、時間とともに自然に平らになったり、目立たなくなったりする傾向があります。
・症状:赤み、かゆみ、痛み、引きつれ感を伴うことがあります。
・できる場所:やけどの跡、手術の傷跡、外傷の跡など、どんな傷でも起こりえます。
・ケロイド:
・原因:傷が治る過程で、線維組織が過剰に作られるだけでなく、傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がりながら盛り上がるのが特徴です。体質的な要素が強く関与します。
・特徴:時間が経っても自然に治ることがほとんどなく、むしろ徐々に拡大する傾向があります。
・症状:強い赤み、強いかゆみ、焼けるような痛み、ひきつれ感などを伴い、生活の質を著しく低下させることがあります。
できる場所:比較的できやすい部位があり、胸の真ん中(前胸部)、肩、背中、耳たぶ(ピアスの跡など)、下腹部などによく見られます。ニキビの跡や虫刺されの跡など、わずかな傷からでもできることがあります。
ケロイドと肥厚性瘢痕は、その性質が異なるため、治療法も異なります。特にケロイドは、体質的な要因が強く、治療が難しい場合があります。自己判断せずに、早期に皮膚科専門医の診断を受け、適切な治療とケアを開始することが、症状の改善と進行の抑制のために非常に重要です。
24時間WEB予約受付中
ケロイド・肥厚性瘢痕の主な原因と誘発要因
ポイント
肥厚性瘢痕の主な原因と誘発要因
・主な原因
・皮膚の張力(引っ張られる力):
手術の傷跡、やけど、外傷など、皮膚に強い張力がかかる部分の傷は、肥厚性瘢痕になりやすいです。特に肘や膝の関節、肩など、動く部位の傷は皮膚が引っ張られやすく、瘢痕が盛り上がりやすい傾向があります。
・炎症の持続:
傷が治る過程で、細菌感染を起こしたり、異物(縫合糸など)が残ったりして、炎症が長引くと、肥厚性瘢痕になりやすくなります。
・掻き壊しや摩擦:
傷口を掻きむしったり、衣服などで継続的に擦れたりすると、刺激によって瘢痕が盛り上がりやすくなります。
・誘発要因:
やけど、外傷、手術、ピアス穴、ニキビ痕、虫刺され痕など、皮膚に何らかのダメージが生じた後。
特定の体質の方がなりやすい傾向はありますが、ケロイドほど強くはありません。
ケロイドの主な原因と誘発要因
・主な原因:
・体質的要因(遺伝的素因):
ケロイドは、個人の体質が強く関与しており、ケロイドができやすい体質の方がいます。ご家族にケロイドの人がいる場合、ケロイドになりやすい傾向があります。これは、線維芽細胞(コラーゲンを作る細胞)の機能が過剰であったり、免疫システムの異常が関与したりすると考えられています。
・炎症の持続と皮膚の張力:
肥厚性瘢痕と同様に、炎症が長引くことや、皮膚が引っ張られる力が加わることも、ケロイドの発症・悪化に関与します。
・誘発要因(小さな傷がきっかけになることも):
比較的できやすい部位:胸の真ん中(前胸部)、肩(特に肩甲骨のあたり)、背中、耳たぶ(ピアス穴など)、下腹部などによく見られます。これらの部位は皮膚の張力がかかりやすい場所でもあります。
・わずかな傷:
手術の傷跡や外傷だけでなく、ニキビの炎症の跡、虫刺されの跡、毛嚢炎(毛穴の炎症)、注射痕、やけどなど、一見小さな傷からでもケロイドができることがあります。
・BCGワクチン接種痕:
BCG接種後も、ケロイドができることがあります。
・性差・年齢:
若い女性にできやすい傾向があると言われています。
・その他:
妊娠、ストレス、免疫力の低下なども、誘発・悪化要因となる可能性が指摘されています。
「傷が治ればケロイドも治る」「ケロイドはウイルス感染症だ」といった誤解がありますが、ケロイドは体質が強く関与し、自然治癒は稀です。また、人から人へうつる病気ではありません。
ケロイド・肥厚性瘢痕の主な症状
主な症状
盛り上がりと硬さ
どちらも、傷の治癒後に皮膚が赤く盛り上がって硬くなるのが特徴です。
赤み
初期は鮮やかな赤色をしていますが、時間とともに赤みが薄くなることがあります(特に肥厚性瘢痕)。ケロイドは比較的赤みが持続しやすい傾向があります。
かゆみ・痛み
多くの場合、かゆみを伴います。特に温まるとかゆみが増すことがあります。
触ると痛みを感じたり、引きつれ感や違和感を伴ったりすることもあります。
拡大の有無(最も重要な鑑別点)
・肥厚性瘢痕:
傷の範囲内に盛り上がりがとどまり、時間とともに自然に改善する傾向があります。
・ケロイド:
傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がりながら盛り上がるのが特徴です。自然に治ることは稀で、むしろ徐々に大きくなる傾向があります。
できる部位
・肥厚性瘢痕:
やけどの跡、手術の傷跡、外傷の跡など、どんな傷でも起こりえます。
・ケロイド:
比較的できやすい部位があり、胸の真ん中(前胸部)、肩、背中、耳たぶ(ピアスの跡など)、下腹部などによく見られます。
ケロイド・肥厚性瘢痕の治療法
主な治療法
ケロイドと肥厚性瘢痕は、治療方針が異なるため、正確な診断が重要です。治療の目的は、症状(かゆみ、痛み、引きつれ感)を和らげ、盛り上がりを目立たなくし、再発を予防することです。
保存的治療(手術以外の方法)
・ステロイド局所注射:
方法:
盛り上がった瘢痕やケロイドに、ステロイドの薬を直接注射します。
特徴:
炎症を抑え、コラーゲンの過剰な生成を抑制することで、盛り上がりを平らにし、かゆみや痛みを和らげる効果が高いです。数週間に1回のペースで、数回~複数回繰り返す必要があります。
メリット:
効果が高い。保険適用。
デメリット:
注射時の痛みを伴う。皮膚の萎縮(へこみ)や色素沈着、毛細血管拡張などの副作用がまれに起こることがある。
・ステロイドテープ・貼り薬:
方法:
ステロイド成分を含んだテープや塗り薬を患部に貼付または塗布します。
特徴:
炎症を抑え、瘢痕の盛り上がりを抑制します。ご家庭で毎日継続する治療法です。
メリット:
痛みがなく、自宅で簡便に治療できる。保険適用。
デメリット:
効果が出るまでに時間がかかる。ケロイドの場合は単独では効果が不十分なことが多い。
・シリコンジェルシート・ゲル:
方法:
盛り上がった瘢痕やケロイドに、シリコン製のシートを貼ったり、ジェルを塗布したりします。
特徴:
患部を圧迫し、適度な湿潤環境を保つことで、コラーゲンの成熟を促し、瘢痕の盛り上がりを抑制する効果が期待されます。術後の傷跡ケアにも用いられます。
メリット:
副作用がほとんどない。自宅で継続できる。
デメリット:
効果が出るまでに時間がかかる。費用は自費診療となる場合が多い。
・圧迫療法:
方法:
患部をサポーターや弾性包帯、専用のパッドなどで継続的に圧迫します。
特徴:
特に肥厚性瘢痕やケロイドの予防、治療初期に用いられます。圧迫することで血流を抑制し、コラーゲンの過剰な生成を抑える効果が期待されます。
メリット:
副作用が少ない。
デメリット:
継続的な圧迫が必要で、見た目や日常生活に影響が出ることがある。
・トラニラスト内服薬:
方法:
アレルギーを抑える作用を持つ内服薬で、ケロイドや肥厚性瘢痕のかゆみや痛みを軽減し、進行を抑制する目的で用いられることがあります。
外科的治療(手術)
方法:
盛り上がった瘢痕やケロイドを切除し、縫合する治療法です。
特徴:
・肥厚性瘢痕:
保存的治療で改善しない場合や、広範囲にわたる場合に、比較的良好な結果が得られます。
・ケロイド:
ケロイドは切除すると再発しやすく、むしろ切除前よりも大きくなるリスクがあるため、手術単独で行われることは稀です。再発予防のために、術後に放射線療法やステロイドの局所注射、ステロイドテープなどの術後療法を組み合わせることが不可欠です。
メリット:
盛り上がりを即座に除去できる。
デメリット:
傷跡が残る。ケロイドの場合は再発のリスクが高い。
放射線療法(アフターケア)
方法:
盛り上がった瘢痕やケロイドに放射線を照射する治療法です。
特徴:
主にケロイドの術後再発予防として用いられます。手術で切除した後、早期に放射線を照射することで、線維芽細胞の増殖を抑制し、ケロイドの再発を強力に防ぐ効果が期待されます。
メリット:
再発予防効果が高い。
デメリット:
専門施設での治療が必要。放射線による皮膚炎などの副作用がある。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、ケロイド・肥厚性瘢痕の診断と治療に関して豊富な経験と知識を持っています。患者さんの瘢痕の状態、症状、そして体質を正確に診断し、最適な治療法をご提案します。特にケロイドは治療が難しい場合があるため、根気強く患者さんと向き合い、最善の治療計画を一緒に考えます。必要に応じて、大学病院など高次医療機関との連携も密に行い、患者さんが安心して最適な治療を受けられるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。
日常生活でできること・ご家庭でのケアのポイント
具体的な対策
ケロイドや肥厚性瘢痕の症状を和らげ、悪化を防ぎ、再発を予防するためには、日々の正しいセルフケアが非常に重要です。特に、皮膚への刺激を避けることと、適切な保湿・保護を心がけましょう。
皮膚への刺激・張力(引っ張る力)を避ける
傷跡や瘢痕、またはケロイドができやすい部位に、物理的な刺激や引っ張られる力を加えないようにしましょう。
傷跡に直接触れる衣類は、肌触りの良い綿素材など、刺激の少ないゆったりとしたものを選びましょう。締め付けの強い服や、硬い素材の服は避けましょう。
特に関節の近くなど、皮膚が常に引っ張られる場所にある傷跡は、過度な伸展運動を避けるようにしましょう。
傷跡をタオルやスポンジでゴシゴシ擦ったり、掻きむしったりしないように注意しましょう。
物理的な刺激や皮膚への張力は、線維芽細胞の過剰な活動を促し、瘢痕の盛り上がりやケロイドの拡大を悪化させる大きな要因となるため、できる限り避けましょう。
保湿ケアの徹底
傷跡や瘢痕、周囲の皮膚の乾燥を防ぎ、皮膚のバリア機能を保ちましょう。入浴後など、清潔な皮膚に、保湿クリームやローションをたっぷりと塗布し、優しくなじませましょう。特に乾燥しやすい時期や部位は、こまめに塗布することを心がけましょう。
乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、刺激に弱くなります。適切な保湿は、皮膚の柔軟性を保ち、かゆみを軽減し、瘢痕の治癒過程を助けます。
紫外線対策
傷跡や瘢痕、ケロイドの部分は、紫外線に当たると色素沈着(黒ずみ)を起こしやすいため、紫外線対策をしましょう。外出時は、傷跡に日焼け止めクリームを塗布したり、衣類や帽子などで覆ったりして、直接日光が当たらないように保護しましょう。
かゆみ対策と掻き壊しの防止
傷跡がかゆい場合は、掻きむしってしまわないように対策しましょう。冷たいタオルで軽く冷やしたり、医師から処方されたかゆみ止めの塗り薬を塗りましょう。爪は短く切り、夜間に無意識に掻いてしまう場合は、手袋を着用するのも有効です。
掻き壊しは、瘢痕の炎症を悪化させ、盛り上がりを増したり、ケロイドの拡大を促したりする原因となるため、可能な限り避けるべきです。
正しい治療の継続(医師の指示厳守)
医師から処方された薬(ステロイドテープ、内服薬など)や、指示されたケア(シリコンシートの貼付など)は、症状が改善したように見えても、自己判断で中止せずに、根気強く継続しましょう。
ケロイドや肥厚性瘢痕は、治療を途中でやめると、再発したり、悪化したりする可能性が高いです。注意しましょう。
やってはいけないこと・避けるべきこと
自己判断で切除しようとする:
ケロイドや肥厚性瘢痕を自分でメスやハサミなどで切除しようとすると、出血、感染、そして何よりもより大きく悪化して再発する危険性が非常に高いため、絶対にやめましょう。
痛みを我慢する:
痛みや引きつれ感を我慢して放置すると、日常生活への支障が大きくなるだけでなく、不自然な体の使い方をして他の部位に負担がかかることもあります。
よくある質問(FAQ)
ケロイドと肥厚性瘢痕は見た目が似ていますが、どう違うのですか?
ケロイドと肥厚性瘢痕は、どちらも傷跡が盛り上がって硬くなる点では似ていますが、その性質に決定的な違いがあります。
・肥厚性瘢痕:
傷の範囲内に盛り上がりがとどまります。時間とともに自然に平らになったり、目立たなくなったりする傾向があります。
・ケロイド:
傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がりながら盛り上がるのが特徴です。自然に治ることは稀で、むしろ徐々に拡大する傾向があります。体質的な要素が強く関与します。
正確な診断は医師がおこないますので、医療機関を受診ください。
私(または家族)はケロイド体質だと聞きました。どうすれば良いですか?
ケロイド体質の方は、わずかな傷でもケロイドになる可能性があるため、日頃から以下の点に特に注意しましょう。
・皮膚への傷や刺激を極力避ける:
手術やピアスの穴開け、タトゥー、あるいはニキビや虫刺されの掻き壊しなど、皮膚に傷ができる行為には慎重になりましょう。
・早めの治療:
万が一、傷跡が赤く盛り上がってきたら、早めに皮膚科を受診しましょう。早期に治療を開始することで、ケロイドの拡大を抑制し、症状を軽減できる可能性が高まります。
・予防的治療:
ケロイドができやすい部位の手術(心臓手術など)を受ける場合は、事前に医師にケロイド体質であることを伝え、術後早期に予防的な治療(ステロイドテープなど)を行うことがあります。
ケロイドや肥厚性瘢痕は自然に治りますか?
肥厚性瘢痕は、時間とともに自然に平らになったり、目立たなくなったりする傾向があります。 しかし、その改善には数ヶ月から年単位の時間がかかることもあります。 一方、ケロイドは、自然に治ることはほとんどなく、むしろ徐々に拡大する傾向があります。 そのため、ケロイドの場合は自然治癒を期待せず、早めに皮膚科を受診し、適切な治療を開始することが重要です。
ケロイドや肥厚性瘢痕の治療は痛いですか?
治療法によって痛みの感じ方は異なります。
・ステロイド局所注射:
盛り上がった患部に直接注射するため、チクッとした痛みを伴います。しかし、効果が高いため、定期的に続けることで症状の改善が期待できます。
・ステロイドテープやシリコンジェルシート:
痛みは全くありません。ご自宅で継続できる治療です。
外科的切除:局所麻酔をしますので、手術中の痛みはほとんどありません。麻酔の注射時にチクっとする程度です。
どの治療法を選ぶかは、状態や患者さんの希望を伺いながら、最適な方法をご提案します。まずは医療機関へ受診しましょう。
手術でケロイドや肥厚性瘢痕を取り除けば、もう治りますか?
肥厚性瘢痕は、手術で切除することで比較的きれいに治る可能性が高いです。 しかし、ケロイドの場合、手術単独では高い確率で再発し、むしろ切除前よりも大きく悪化して再発するリスクがあるため、非常に慎重な判断が必要です。
ケロイドの手術を行う場合は、再発予防のために、手術後すぐに放射線療法(瘢痕の増殖を抑える)や、ステロイドの局所注射、ステロイドテープの貼付などの術後療法を組み合わせることが不可欠です。この組み合わせ治療によって、ケロイドの再発率を大幅に下げることができます。
このような場合はご相談ください
以下でお悩みの方はご相談ください。
かゆみや痛みがつらい
見た目が気になって、人目が気になる
治らないと諦めている
以前、手術したらもっとひどくなった
24時間WEB予約受付中
当院では、ケロイド・肥厚性瘢痕を正確に診断し、患者さんお一人おひとりの状態とご希望に合わせて、最適な治療法をご提案します。痛みを和らげ、盛り上がりを目立たなくし、再発を防ぐための治療を、根気強く一緒に進めていきましょう。
安心してご相談いただける環境を整えておりますので、どんな些細なことでもお気軽にお声がけください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医