皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
巻き爪、陥入爪とは
爪のトラブルは、爪だけでなく足全体または全身の問題ととらえることが大切です。
巻き爪は自然に治ることはほとんどなく、進行すると歩き方が変化することでタコやウオノメ、膝痛や腰痛、さらには細菌感染で炎症を起こしたり(爪囲炎)、爪が皮膚に食い込んでしまう(陥入爪)で腫れや痛みがより強くなります。
巻き爪は、足の指の爪が、内側に向かって丸く湾曲して巻いた状態になる病気です。特に足の親指の爪に多く見られます。爪が巻くことで、爪の端が皮膚に食い込んだり、周囲の皮膚を圧迫したりするため、痛みや炎症を引き起こすことがあります。軽度なうちは見た目の問題だけですが、進行すると痛みが強くなり、歩くのがつらくなったり、日常生活に大きな支障をきたしたりすることがあります。
巻き爪を放置すると、爪が皮膚に食い込むことでさらに強い痛みが生じたり、その場所から細菌が侵入して感染症(爪囲炎:ひょう疽)を起こし、赤く腫れて膿が出たりすることもあります。特に、糖尿病をお持ちの方や、足の感覚が鈍くなっている方は、感染が重症化しやすいため、より注意が必要です。また、巻き爪による痛みを避けるために、不自然な歩き方をしてタコやウオノメができたり、膝や腰に負担がかかることもあります。
巻き爪は、遺伝的な要因もありますが、多くの場合、足に合わない靴の着用や、誤った爪の切り方、足への負担などが原因で発生します。自己判断で爪を深く切ったり、無理にいじったりすると、かえって症状を悪化させる危険性があります。「もしかして巻き爪かも?」「爪が食い込んで痛い」と感じたら、症状が軽いうちに皮膚科専門医の診断を受け、適切な治療とケアを開始することが、症状の悪化を防ぎ、快適な生活を送るために非常に重要です。
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巻き爪の主な原因と誘発要因
ポイント
巻き爪は、爪が内側に巻いてしまう原因が一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発生・悪化することが多いです。特に高齢者の方の場合、足の変形や筋力低下なども影響します。
不適切な爪の切り方
・深爪(深切り):爪の先端を深めに、特に両端を丸く切りすぎると、その部分の皮膚が盛り上がりやすくなります。すると、次に伸びてくる爪がその盛り上がった皮膚にぶつかって食い込み、さらに巻いてしまう悪循環に陥ります。これが巻き爪の最も多い原因の一つです。
・爪の角を丸く切りすぎる:爪の角を深く斜めに切ると、爪が皮膚の奥に潜り込みやすくなり、巻き爪を誘発します。
足に合わない靴の着用
・先端が細い靴やヒールの高い靴:足の指が靴の中で圧迫され、爪が上から押しつけられることで、爪が下向きに巻こうとする力が加わります。また、つま先に体重が集中し、指が圧迫されることで爪が皮膚に食い込みやすくなります。
・サイズが小さい靴:指全体が圧迫され、爪が正しく伸びるのを妨げます。
・サイズが大きい靴:靴の中で足が滑り、余計な摩擦や衝撃が爪にかかることがあります。
足への継続的な負担
・長時間の立ち仕事や歩行:足裏に継続的に体重がかかることで、指先にも圧力が加わり、爪が巻く原因となることがあります。
・スポーツ:爪への衝撃や圧迫が繰り返し加わるスポーツ(サッカーなど)も原因となることがあります。
・体重増加:急な体重増加も、足への負担を増やし、巻き爪を誘発することがあります。
足の構造や変形
・外反母趾、内反小趾、扁平足:足の骨格の変形やアーチの崩れがあると、足指が正しく機能せず、特定の爪に不自然な圧迫や負担が集中しやすくなります。
・ハンマートゥ、マレットトゥ:足の指が曲がって固定された状態になると、指の先端が靴に当たり、爪に過度な圧迫がかかります。
加齢による爪の変化
高齢になると、爪自体の水分が減って乾燥しやすくなり、爪が厚く硬く、もろくなることがあります。これにより爪が正常に伸びにくくなり、湾曲しやすくなります。
足の指の骨や関節の変形が進むと、爪への負担が増加します。
足のアーチの低下や、足指の筋力低下も巻き爪を悪化させる要因となります。
遺伝的要因
巻き爪になりやすい体質が遺伝することもあります。
病気や薬剤の影響
糖尿病など血行障害を伴う病気や、特定の薬剤(抗がん剤の一部)が爪の成長に影響を与え、巻き爪を誘発することがあります。
「巻き爪は自己流で切れば治る」「痛いからといって放置しても大丈夫」といった誤解がありますが、不適切な処置は症状を悪化させ、感染のリスクを高めます。
巻き爪の治療法
主な治療法
巻き爪の治療は、爪が巻く原因を取り除くとともに、症状を和らげることを目的とします。症状の程度や痛みの有無、感染の有無によって治療法を選択します。
保存的治療(手術以外の方法)
・爪の切り方の指導:
「スクエアオフ」と呼ばれる、爪の先端を深爪にせず、指先と同じくらいの長さにまっすぐ切る方法を指導します。爪の角は丸く切りすぎず、やすりで軽く整える程度にします。
爪の角を深く切りすぎると、次に伸びてくる爪が皮膚に食い込みやすくなるため、巻き爪を悪化させる原因となります。
・テーピング療法:
爪が食い込んでいる部分の皮膚をテープで引っ張り、爪との間に隙間を作ることで、痛みを軽減し、爪が伸びるのを助けます。ご家庭で毎日行います。
・コットンパッキング法:
爪の食い込んだ部分に、小さく丸めた医療用コットンやガーゼを詰めて、爪を持ち上げ、食い込みを軽減します。深く詰めすぎるとかえって痛むことがあるので注意が必要です。
・巻き爪矯正(巻き爪マイスター、超弾性ワイヤー):
フックを爪の両側縁に固定し、バネの断続的な収縮力で爪の湾曲を矯正する方法(巻き爪マイスター)や、爪に穴をあけ弾性ワイヤーを通し爪の湾曲を矯正する方法(ワイヤー法)などがあります。
・外用薬(塗り薬):
炎症を抑えるステロイド外用薬や、細菌感染がある場合は抗菌外用薬を処方します。
外科的治療(手術)
炎症や痛みがひどく、保存的治療で改善しない場合や、肉芽ができてしまっている場合に検討されます。部分的な爪切除(爪甲側縁切除術)や、根治的な治療として爪母(爪を作る部分)を焼灼・切除して、爪が生えてこないようにする手術があります。
生活指導
・足に合った靴の選び方:適切な靴選びを指導します。
・インソールの活用:足のアーチをサポートするインソールや、特定の部位への圧力を軽減するパッドなどを利用することで、負担を分散させ、再発を予防します。
・足のケア:毎日足を清潔にし、保湿を心がける。
・基礎疾患の管理:糖尿病などをお持ちの場合は、合併症を防ぐためにも、巻き爪の適切な管理が非常に重要です。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、巻き爪の診断と治療に関して豊富な経験と知識を持っています。患者さんの巻き爪の状態、痛みの程度、基礎疾患、そしてご希望を総合的に評価し、最適な治療法をご提案します。特に高齢の患者さんの場合、足の変形や歩行への影響も考慮し、丁寧な診察とサポートを心がけています。「このクリニックなら安心して相談できる」と感じていただけるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。
巻き爪の日常生活でできること・ご家庭でのケアのポイント
具体的な対策
正しい爪の切り方
爪の先端を深爪にせず、指先と同じくらいの長さにまっすぐ切る「スクエアオフ」を心がけましょう。爪の角を丸く切りすぎないようにします。
爪切りで爪の先端をまっすぐに切り、両端の角は皮膚に食い込まない程度に、やすりで軽く整える程度にしましょう。爪切りは、お風呂上がりなど、爪が柔らかくなっている時に行うと切りやすいです。
爪の先端を深めに、特に両端を丸く切りすぎると、その部分の皮膚が盛り上がりやすくなります。すると、次に伸びてくる爪がその盛り上がった皮膚にぶつかって食い込み、さらに巻いてしまう悪循環に陥るため、巻き爪の最も大きな原因の一つとなります。
足に合った靴を選ぶ
足のサイズと形にぴったり合った靴を選びましょう。靴を購入する際は、必ず両足で試着し、可能であれば足がむくみやすい午後(夕方)に履いてみましょう。長さだけでなく、幅や甲の高さもフィットしているか確認しましょう。つま先に1cm程度の余裕があるのが理想的です。つま先が細すぎる靴や、ヒールの高過ぎる靴は避けましょう。
また、通気性が良く、足になじむ柔らかい素材を選びましょう。
靴を履く際は、かかとをトントンと合わせてから紐やベルトをしっかり締め、足が靴の中で動かないようにしましょう。
爪の保湿と足の清潔保持
爪や足全体の皮膚の乾燥を防ぎ、清潔に保ちましょう。爪が乾燥すると硬く、もろくなり、巻く力が強くなることがあります。入浴後や乾燥を感じるたびに、保湿クリームやネイルオイルを爪と爪の周りに塗布し、優しくマッサージしましょう。足全体も石鹸で優しく洗い、清潔なタオルで水気を丁寧に拭き取り、特に指の間まで完全に乾燥させましょう。
乾燥した爪は、より硬く巻いてしまいやすくなります。清潔を保つことで、巻き爪による炎症や感染を防ぎます。
足への負担を軽減する
長時間の立ち仕事や歩行を避け、足の負担を軽減する工夫をしましょう。適度に休憩を取り、足を休ませましょう。足裏の特定の部位への圧力を分散させるインソール(中敷き)や、ドーナツ型の保護パッドなどを靴の中に活用するのも有効です。
足裏に継続的に体重がかかることで、指先にも圧力が加わり、爪が巻く原因となることがあります。
爪の異常を見つけたら早めに受診
爪の痛みや赤み、変形に気づいたら、早めに皮膚科を受診しましょう。症状が軽いうちに治療を始めることで、重症化を防ぎ、より簡単な方法で改善できる可能性が高まるためです。自己判断で無理にいじると、かえって悪化させることがあります。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・巻き爪の芯や食い込んだ部分を自分で深く切る:
出血、感染、神経損傷、再発のリスクを非常に高めます。必ず皮膚科で専門的な処置を受けましょう。
・市販の巻き爪用テープや矯正器具を自己判断で使い続ける:
正しい使用方法でなければ効果がなかったり、かえって悪化させたりする可能性があります。
・痛みを我慢する:
痛みを我慢して歩き続けると、歩き方が不自然になり、膝や腰など他の部位に負担がかかることがあります。
よくある質問(FAQ)
巻き爪と陥入爪は同じ病気ですか?
巻き爪と陥入爪は、症状が似ていますが、厳密には異なります。
・巻き爪:
爪自体が内側に向かって丸く湾曲して巻いた状態を指します。痛みがなくても「巻き爪」と診断されます。
・陥入爪(かんにゅうそう):
爪の先端や側面が周囲の皮膚に食い込み、痛みや炎症(赤み、腫れ)、肉芽(にくげ)の形成を伴う状態を指します。巻き爪が進行して陥入爪になることもありますが、巻き爪でなくても陥入爪になることがあります。
ご自身の症状がどちらに当てはまるか、また適切な治療法については、皮膚科医が診察して判断します。
巻き爪は自然に治りますか?
巻き爪が自然に完全に治ることは非常に稀です。特に、深爪や合わない靴など、原因となる習慣を続けている限り、症状は進行したり、再発したりする可能性が高いです。放置すると、痛みが慢性化し、感染症を併発したり、肉芽が形成されたりすることがあります。痛みが軽いうちに、あるいは痛みがない段階で気づいた場合でも、早めに皮膚科を受診し、適切なケアと治療を開始することで、重症化を防ぐことができます。
巻き爪の治療は痛いですか?痛くない治療法はありますか?
巻き爪の治療には、痛みを伴うものと、ほとんど痛まないものがあります。爪が食い込んで炎症を起こしている場合、食い込んだ部分の爪の切除や、膿がたまっている場合の排膿処置、また、根本治療として行われる手術療法(爪母を切除するなど)は痛みを伴います(局所麻酔を使用するため手術中は無痛です)。テーピング療法やコットンパッキング法は、ご自身でできる方法で、痛みが少ないです。また巻き爪矯正では器具を固定する際に軽度の痛みを感じる場合がありますが、ほとんどの場合は痛みはありません。どの治療法を選ぶかは、巻き爪の重症度、痛みの程度、ご希望などを伺いながら、患者さんに最適な方法をご提案します。
高齢者が巻き爪になった場合、特に注意が必要ですか?
はい、高齢者の方が巻き爪になった場合、特に注意が必要です。 高齢になると、爪自体の乾燥や肥厚、足の変形、足指の筋力低下などが原因で巻き爪になりやすくなります。また、以下のような点に注意が必要です。
・糖尿病:
糖尿病をお持ちの方は、神経障害で足の痛みを感じにくくなったり、血行障害で傷が治りにくくなったりするため、巻き爪から重篤な感染症や潰瘍、壊疽に発展するリスクが高いです。
・免疫力の低下:
全身の抵抗力が落ちていると、巻き爪の炎症が治りにくく、感染症を起こしやすくなります。
・自己ケアの難しさ:
高齢になると、自分で爪を切ったり、足のケアをしたりするのが難しくなる方もいらっしゃいます。
そのため、ご家族や介護者の方も巻き爪の症状に気づいたら、早めに医療機関を受診し、適切なケアについて相談することが重要です。
24時間WEB予約受付中
当院では、患者さんの巻き爪の状態を正確に診断し、痛みの原因を特定した上で、お一人おひとりに最適な治療法をご提案します。手術以外の矯正方法も積極的に取り入れ、患者さんの負担を最小限に抑えながら、快適な歩行を取り戻せるよう全力でサポートさせていただきます。 巻き爪のことで少しでも気になること、不安なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医