皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
癜風(でんぷう)とは
カビの異常増殖で起こる皮膚の病気。
痛みやかゆみなどの症状が少ないため、単なる「シミ」と間違えられたり、見逃されていることも。
高温多湿の夏季に多く、治ったあとも色素沈着、色素脱失が残ることもあるため、症状があれば早めの受診がオススメです。
癜風(でんぷう)は、皮膚の表面に常在しているマラセチア菌というカビ(真菌)の一種が異常に増殖することで発症する皮膚の病気です。この菌は普段は無害ですが、高温多湿な環境などの条件が揃うと、皮膚の上で過剰に増殖し、特有の症状を引き起こします。
主な症状は、体の表面に現れる茶色っぽい、または白っぽい、カサカサした小さな斑点です。特に、皮脂の分泌が多い胸、背中、首、腕の付け根などにできやすいのが特徴です。色は褐色、淡紅色、白色など様々で、周りの皮膚との境界が比較的はっきりしていることが多いです。多くの場合、かゆみはほとんどないか、あっても軽い程度です。しかし、時に症状が広範囲に及んだり、見た目の問題で悩んだりすることがあります。放置すると、症状が慢性化して広がりやすくなり、なかなか治りにくくなることがあります。癜風は、水虫(足白癬)と同じ真菌感染症ですが、原因菌の種類が異なります。自己判断せずに、早期に皮膚科専門医の診断を受け、適切な治療を開始することが、症状の改善と感染の拡大防止のために非常に重要です。
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癜風の主な原因と誘発要因
ポイント
癜風は、皮膚の常在菌であるマラセチア菌の異常増殖によって引き起こされます。この菌が活発になる特定の環境や状況が、癜風の発症や悪化を促します。
主な原因
・マラセチア菌の異常増殖:癜風の直接的な原因は、皮膚の毛穴の周辺に常に存在するマラセチア菌が、何らかのきっかけで異常に増殖することです。この菌は皮脂を栄養源としています。
日常生活で症状を悪化させる誘発要因
・高温多湿な環境:マラセチア菌は高温多湿な環境を好みます。
・夏場:汗をかきやすく、湿度が高い夏場に特に発症しやすく、悪化しやすい傾向があります。
・梅雨の時期:高湿度も菌の増殖を促します。
・汗をかきやすい体質・状況:
・多汗症:汗をかきやすい方は、皮膚が湿潤な状態になりやすく、マラセチア菌が増殖しやすくなります。
・職場環境や運動:仕事やスポーツなどで長時間、汗をかく機会が多いと、癜風のリスクが高まります。
・皮脂の過剰分泌:皮脂腺が発達している部位(胸、背中、顔など)は、マラセチア菌の栄養源が豊富であるため、癜風ができやすい場所です。
・思春期以降:ホルモンバランスの変化により皮脂分泌が増える時期は、癜風も発症しやすくなります。
・オイリー肌:皮脂分泌が活発な肌質の方も、癜風になりやすい傾向があります。
・不適切な衛生状態:汗をかいた後、シャワーを浴びずにそのままにする、肌着をこまめに着替えないなど、皮膚を清潔に保たないと菌が増殖しやすくなります。
・免疫力の低下:疲労、ストレス、睡眠不足、病気(糖尿病など)、ステロイド剤や免疫抑制剤の使用などにより体の免疫力が低下していると、マラセチア菌が異常に増殖しやすくなります。
「癜風は自然に治る」「石鹸でゴシゴシ洗えば治る」といった誤解がありますが、自然治癒することは稀であり、不適切なケアはかえって悪化させる可能性があります。特に白色の癜風は、治った後もしばらく色が戻らないことがあり、見た目の問題で悩む方も少なくありません。
癜風の治療法
主な治療法
癜風の治療は、マラセチア菌を確実に死滅させることが主な目的です。症状が改善したように見えても、再発の多い疾患です。根気強く治療を続けることが非常に重要です。
外用薬(塗り薬)
・抗真菌薬:癜風の治療の基本は、マラセチア菌の増殖を抑えたり、殺菌したりする作用のある抗真菌薬の外用です。クリーム、液剤、スプレーなど様々なタイプがあり、感染部位や症状に合わせて選択します。
・症状のある部分だけでなく、その周囲にも広めに塗布することが重要です。
・見た目の症状が改善しても、菌が減少するまで、最低でも数週間から1ヶ月程度は毎日塗り続ける必要があります。再発しやすい病気のため、夏場は予防的に塗布を続けることも推奨されます。
・ミコナゾール硝酸塩配合ボディソープ:頭部や背中、胸など広範囲に症状がある場合に、体全体を洗う形で使用する抗真菌剤の入ったボディソープを用いることがあります。これは、マラセチア菌に有効な成分を含んでいます。週に数回使用することで、菌の数を減らし、症状を改善させます。また予防的に使用する場合もあります。
内服薬(飲み薬)
・以下のような場合に、抗真菌薬の内服が検討されます。
・外用薬では効果が見られない、あるいは症状が広範囲に及ぶ場合。
・再発を繰り返すなど、難治性の癜風の場合。
・内服薬は肝臓の機能に影響を与える可能性や、他の薬剤との飲み合わせに注意が必要な場合があるため、状況によって服用中は定期的な血液検査などを行い、医師の管理下で安全に進めます。
原因菌の特定(顕微鏡検査)
当院では、まず患部の皮膚の一部を採取し、顕微鏡でマラセチア菌がいるかどうかを確認する検査を行います。これにより、他の皮膚病(湿疹など)との鑑別を行い、確実に癜風であると診断した上で、適切な治療を開始します。この検査は痛みもなく、数分で結果が出ます。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、癜風の診断と治療に関して豊富な経験と知識を持っています。患者さんの症状を正確に診断し、最新の治療法を組み合わせながら、再発を防ぐためのアドバイスも丁寧に行います。患者さんが安心して治療に取り組めるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。
日常生活でできること・セルフケアのポイント
具体的な対策
癜風の治療効果を高め、再発を防ぐためには、毎日の正しいセルフケアと生活習慣の見直しが非常に重要です。特に、マラセチア菌が増殖しやすい高温多湿な環境を避ける工夫が大切です。
皮膚を清潔に保ち、しっかり乾燥させる
汗をかいたら、できるだけ早くシャワーを浴びたり、清潔なタオルで拭き取ったりして、皮膚を清潔に保ちましょう。特に、胸、背中、首、わきの下など、汗をかきやすく蒸れやすい部位は、丁寧に洗い、入浴後やシャワー後はタオルで水気を完全に拭き取り、乾燥させることが重要です。汗をかく機会の多い方は、日中もこまめに汗を拭き取りましょう。マラセチア菌は高温多湿な環境で増殖するため、皮膚を清潔で乾燥した状態に保つことで、菌の繁殖を抑えられます。
衣類の選び方と管理
吸湿性・通気性の良い素材の衣類を選びましょう。綿や麻などの天然素材、または速乾性の高い機能性素材の肌着や衣類を選び、汗をかいたらこまめに着替えるようにしましょう。濡れた衣類を長時間着用するのは避けましょう。汗や湿気がこもりやすい衣類は、菌の増殖を促します。通気性の良い衣類を選ぶことで、皮膚を常に乾燥した状態に保ちやすくなります。
皮脂分泌のコントロール
・皮脂の過剰分泌が気になる場合は、洗顔料やボディソープを見直しましょう。刺激の少ない、適度な洗浄力の洗顔料やボディソープを選び、皮脂が多い部位は丁寧に洗いましょう。ただし、洗いすぎはかえって皮膚を乾燥させ、バリア機能を低下させることもあるので注意が必要です。
・マラセチア菌は皮脂を栄養源とするため、皮脂分泌を適切にコントロールすることで、菌の増殖を抑えることができます。
生活習慣の見直し
疲労やストレスを避け、十分な睡眠をとり、バランスの取れた食事を心がけましょう。免疫力の低下は、マラセチア菌の異常増殖を許してしまう原因の一つです。健康的な生活習慣は、体の免疫力を保ち、病気への抵抗力を高めます。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・自己判断で薬の使用を中断する:症状が改善したように見えても、マラセチア菌が完全に死滅しているとは限りません。医師の指示なく治療を中断すると、再発する可能性が非常に高いため、必ず最後まで治療を続けましょう。特に夏場は菌が活発になりやすいため、症状がなくても予防的にケアを続ける必要がある場合もあります。
・症状がある部位をゴシゴシ洗う:皮膚を傷つけ、炎症を悪化させる可能性があります。
・症状がないからと放置する:癜風はかゆみなどはほとんどありませんが、自然治癒することは稀で、放置すると広範囲に広がる可能性があり、治りにくくなることがあります。特に白色の癜風は、治った後も色素が戻るまでに時間がかかります。
よくある質問(FAQ)
癜風は水虫と同じカビが原因の病気ですか?
はい、癜風も水虫(足白癬)も、どちらも「カビ(真菌)」が原因で起こる皮膚の病気ですが、原因となるカビの種類が異なります。水虫(足白癬)の原因は、主に「白癬菌(皮膚糸状菌)」です。癜風の原因は、主に「マラセチア菌」です。
症状の現れ方や、治療に使用する薬剤も異なる場合があります。自己判断せずに、皮膚科で正確な診断を受けることが重要です。
癜風はうつりますか?
癜風の原因であるマラセチア菌は、もともと誰の皮膚にも存在する「常在菌」です。そのため、水虫のように人から人へ「感染してうつる」というよりは、ご自身の皮膚にいる菌が、高温多湿や皮脂過多といった条件が揃ったときに、異常に増殖して発症するという病気です。ただし、体質的に癜風になりやすい方が同じタオルや寝具などを共有することで、菌の量が増え、発症のきっかけとなる可能性はゼロではありません。過度に心配する必要はありませんが、清潔を保つようにしましょう。
癜風の白い斑点は、治っても色が戻らないことがあると聞きましたが本当ですか?
はい、その通りです。癜風には、茶色っぽい(褐色)や赤っぽいタイプと、白い斑点(白色癜風)になるタイプがあります。白い斑点の癜風は、マラセチア菌が作り出す物質が、皮膚の色素を作るメラニン細胞の働きを阻害するために起こります。菌を殺す治療薬で癜風自体は治りますが、メラニン細胞の働きが回復するまでには時間がかかります。そのため、症状が改善した後も、しばらくの間、白い斑点が残ることがあります。この白い斑点は、通常、時間が経てば自然に色素が戻ってきますが、治ったからといって紫外線を浴びすぎると、周りの皮膚が日焼けして白い部分が目立つことがありますので注意が必要です。
癜風はかゆくないことが多いと聞きましたが、かゆみがある場合は別の病気ですか?
癜風は一般的にかゆみが少ない、またはほとんどないことが多いですが、全くかゆみがないわけではありません。特に汗をかいた時や、症状が比較的活発な時期には、軽いかゆみを感じることがあります。かゆみが強い場合は、湿疹やアトピー性皮膚炎など、他の皮膚病の可能性も考えられます。自己判断せずに、皮膚科で検査を受け、原因を特定することが重要です。
治療期間はどれくらいかかりますか?症状がなくなったら薬をやめてもいいですか?
癜風の治療期間は、症状の程度や広がりにもよりますが、通常は数週間から1ヶ月程度の外用薬塗布が必要です。症状が改善したように見えても、マラセチア菌が完全にいなくなっていないことがほとんどです。医師の指示に従い、菌が完全に死滅するまで(通常は症状が消えてからさらに数週間)治療を継続することが、再発を防ぐために最も重要です。特に夏場に再発しやすい病気のため、夏の間は予防的にボディソープなどを使用するよう指導することもあります。
癜風は再発しやすい病気ですか?再発を防ぐにはどうすれば良いですか?
はい、癜風は高温多湿な環境を好むマラセチア菌が原因であるため、夏場に再発しやすい病気です。再発を防ぐためには、治療後の継続的なセルフケアが非常に重要です。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況に当てはまる場合は、一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。
胸、背中、首、腕の付け根などに、茶色っぽい、または白っぽい、カサカサした小さな斑点がある
特に夏場や汗をかいた時に、これらの斑点が目立つ、または広がる
皮膚にシミのようなものができたが、それが癜風なのか、他の皮膚病なのか判断に迷う
市販薬を試したが、症状が改善しない、あるいは悪化している
かゆみはほとんどないが、見た目の問題が気になる
過去に癜風と診断されたことがあり、再発が心配な方
汗をかきやすい体質で、皮膚症状がよく出る方
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癜風は、早期に正確な診断を受け、適切な治療と日々のケアを続けることで、必ず改善が見込めます。当院の皮膚科専門医が、患者さん一人ひとりの症状と状況を正確に診断し、最適な治療法と生活指導をご提案いたします。「ここに来れば大丈夫」と安心していただけるよう、全力でサポートさせていただきますので、どんな些細なことでもお声がけください。
監修医情報
略歴
-
2023年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医