皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
白癬(水虫・たむし)・爪白癬とは
日本人の5人に1人は足の水虫、爪に感染すると治療は長期になることも。
自然に治ることはまれで、周囲やご家族への感染の拡大防止のため、自己判断で市販薬を塗る前に皮膚科受診をしましょう。
白癬(はくせん)は、白癬菌(はくせんきん)というカビ(真菌)の一種が皮膚の角質層や爪、毛髪などに感染して起こる病気の総称です。一般的に「水虫」と呼ばれるのは足にできた白癬のことで、足の指の間や足の裏、かかとなどに発症します。
白癬菌が体の他の部位に感染すると、その部位によって呼び方が変わります。
・水虫(足白癬): 足にできる白癬。
・爪水虫(爪白癬):手や足の爪に感染した白癬。
・しらくも(頭部白癬):小児に多く、大量のフケを生じ、脱毛になることもある。
・たむし(体部白癬、股部白癬など): 足以外の体の皮膚にできる白癬。股にできるものを「いんきんたむし(股部白癬)」、それ以外の体にできるものを「ぜにたむし(体部白癬)」と呼ぶこともあります。
白癬の主な症状は、かゆみ、皮膚の赤み、小さな水ぶくれ、皮膚の皮むけやカサつきです。爪に感染すると爪が白く濁ったり厚くなったりし(爪白癬)、頭部に感染するとフケやかゆみ、脱毛が見られることもあります(頭部白癬)。白癬は多くの場合、強いかゆみを伴いますが、かかと水虫のように自覚症状がほとんどないタイプもあります。放置すると、症状が慢性化して治りにくくなったり、家族や周囲の人にうつしてしまったりする可能性があります。また、皮膚のバリア機能が低下し、細菌感染を併発することもあります。白癬は自然治癒することはほとんどなく、放置すると悪化する一方です。早期に皮膚科を受診し適切な治療を開始することが、症状の改善と感染の拡大防止のために非常に重要です。
白癬(水虫・たむし)・爪白癬の主な原因と誘発要因
ポイント
白癬(水虫・たむし)の原因は、皮膚糸状菌という真菌(カビ)の一種への感染です。この菌は、特定の環境や状況下で増殖しやすくなります。
主な原因
・白癬菌(皮膚糸状菌)への感染:白癬の直接的な原因は、白癬菌が皮膚の表面にあるケラチンというタンパク質を栄養源として増殖することです。
・接触感染:感染している人との直接的な皮膚接触や、感染者が使用したバスマット、スリッパ、床、タオルなどを介して感染することがほとんどです。
・動物からの感染:犬や猫などのペットが白癬菌に感染している場合、その動物と触れることで人に感染することもあります。特に、ペットからの感染では、顔や腕など、ペットを触る部位に「たむし」として症状が出ることがあります。
・自己感染:足の水虫を放置していると、掻いた手で体を触るなどして、自分の足から他の部位(股や体など)に白癬菌が広がり、「たむし」として発症することがあります。
日常生活で症状を悪化させる誘発要因
・高温多湿な環境:白癬菌は高温多湿な環境を好みます。
・足のムレ:長時間靴や靴下を履き続けることで足が蒸れると、白癬菌が増殖しやすい環境が作られます。特に、通気性の悪い革靴やブーツ、ナイロン製の靴下などは注意が必要です。
・体のムレ:股間、わきの下、お尻など、皮膚がこすれやすく汗をかきやすい部位は、湿気がこもりやすく、「たむし」ができやすい傾向があります。
・皮膚の不衛生:足や体を十分に洗わない、洗った後にしっかり乾燥させないなど、皮膚が不潔な状態だと白癬菌が繁殖しやすくなります。
・免疫力の低下:疲労、ストレス、睡眠不足、加齢、糖尿病などの基礎疾患、免疫抑制剤の使用などにより体の免疫力が低下していると、白癬菌に感染しやすくなったり、症状が悪化しやすくなったりします。
・皮膚の傷:足にできた小さな傷や、軽石などで角質を傷つけすぎると、そこから白癬菌が侵入しやすくなります。
「水虫は冬になると治る」といった誤解がありますが、冬に症状が落ち着いても、白癬菌が死滅したわけではなく、活動が一時的に不活発になるだけです。治療を途中でやめると、暖かくなるとともに再発することがあります。
白癬(水虫・たむし)・爪白癬の治療法
主な治療法
白癬(水虫・たむし)の治療は、白癬菌を確実に死滅させることが主な目的です。症状が改善したように見えても、菌が完全にいなくなっていないと再発を繰り返すため、根気強く治療を続けることが非常に重要です。
外用薬(塗り薬)
・抗真菌薬:白癬の治療の基本は、白癬菌の増殖を抑えたり、殺菌したりする作用のある抗真菌薬の外用です。クリーム、軟膏、液剤、スプレーなど様々なタイプがあり、感染部位や症状に合わせて選択します。
・足白癬(水虫)の場合:症状のある部分だけでなく、足指の間から足の裏全体に広範囲に塗布することが重要です。特に症状がないように見える部位にも菌が潜んでいることが多いため、最低でも1ヶ月以上は毎日塗り続ける必要があります。症状が改善しても、自己判断で中止せず、医師の指示に従ってさらに数週間~数ヶ月は継続して塗布することで、再発を効果的に防げます。
・体部白癬・股部白癬(たむし)の場合:円形に広がる発疹の端(活発に菌が増殖している部分)を中心に、外側へ広めに塗布します。比較的早く症状が改善することが多いですが、ここでも菌が残っていないか、最低1ヶ月程度は継続して塗布することが推奨されます。
・ステロイド外用薬:強いかゆみや炎症が目立つ場合、一時的にステロイド外用薬が併用されることもあります。ただし、ステロイド単独では白癬菌を殺菌できないため、必ず抗真菌薬と併用するか、炎症が治まってから抗真菌薬に切り替える必要があります。
内服薬(飲み薬)
・爪白癬(爪の水虫):塗り薬では成分が爪の奥まで届きにくいため、内服薬が第一選択となります。数ヶ月から1年程度の服用が必要ですが、近年では服用期間の短い新しい薬剤も登場しています。
・角化型足白癬(かかとが硬くなるタイプ):皮膚が厚く硬くなっているため、塗り薬が浸透しにくい場合に内服薬が有効です。
・広範囲にわたる白癬、外用薬で効果が見られない場合:体部白癬や股部白癬が広範囲に及ぶ場合や、塗り薬だけではなかなか改善しない場合に内服薬が検討されます。
・頭部白癬:髪の毛に菌が感染している場合は、塗り薬だけでは治りにくいため、内服薬が中心となります。
・漢方薬:湿疹が合併しているなど、炎症やかゆみ、乾燥、体質改善を図る目的で処方する場合があります。
内服薬は肝臓の機能に影響を与える可能性や、他の薬剤との飲み合わせに注意が必要な場合があるため、服用中は定期的な血液検査などを行い、医師の管理下で安全に進めます。
原因菌の特定(顕微鏡検査)
当院では、まず患部の皮膚の一部を採取し、顕微鏡で白癬菌がいるかどうかを確認する検査を行います。これにより、他の皮膚病(湿疹など)との鑑別を行い、確実に白癬であると診断した上で、適切な治療を開始します。この検査は痛みもなく、数分で結果が出ます。自己判断で市販の水虫薬を塗っている場合、白癬菌の検出が困難な場合もあります(偽陰性)。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、白癬の診断と治療に関して豊富な経験と知識を持っています。患者さんの症状を正確に診断し、最新の治療法を組み合わせながら、再発を防ぐためのアドバイスも丁寧に行います。患者さんが安心して治療に取り組めるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。
日常生活でできること・セルフケアのポイント
具体的な対策
白癬(水虫・たむし)の治療効果を高め、再発を防ぎ、家族や周囲への感染を防ぐためには、毎日の正しいセルフケアと生活習慣の見直しが非常に重要です。
足を清潔に保ち、しっかり乾燥させる
毎日、足(特に指の間)を石鹸で丁寧に洗いましょう。入浴時やシャワー時に、足の指の間までしっかりと石鹸を泡立てて洗います。ゴシゴシ擦るのではなく、優しく洗いましょう。洗った後は、タオルで水気を丁寧に拭き取り、指の間まで完全に乾燥させることが重要です。ドライヤーの冷風で乾かすのも有効です。
白癬菌は高温多湿な環境を好みます。足を清潔に保ち、乾燥させることで、菌の増殖を抑え、感染のリスクを減らします。
靴・靴下の選び方と管理
通気性の良い靴を選び、毎日同じ靴を履かないようにしましょう。靴下は吸湿性の良い綿や麻素材を選び、毎日清潔なものに履き替えましょう。一日履いた靴は湿気を多く含んでいるため、数足を交互に履き、履かない日はしっかりと乾燥させましょう。オフィスではサンダルなどに履き替えるのもおすすめです。ナイロン製の靴下は蒸れやすいため避け、5本指ソックスなども指間の通気を良くするのに役立ちます。
靴や靴下の中は白癬菌にとって最適な環境です。蒸れを防ぎ、清潔を保つことで、菌の繁殖を抑えられます。
家庭内の環境整備(感染予防)
家族に白癬の人がいる場合は、感染源となる可能性のある物品の共有を避け、室内を清潔に保ちましょう。
・バスマット:毎日洗濯し、よく乾燥させましょう。可能であれば個人専用にしましょう。白癬菌は、付着してから感染するまでに24時間程度かかると言われているため、入浴後に足をしっかり洗い流すだけでも予防効果があります。
・スリッパ:個人専用のスリッパを使用しましょう。
・床、畳:こまめに掃除機をかけたり、水拭きをしたりして、白癬菌を含む可能性のあるホコリや垢を取り除きましょう。
・タオル:個人専用のタオルを使用し、使用後は洗濯してよく乾燥させましょう。
公共施設の利用に注意
白癬菌は、はがれた皮膚や切った爪からも感染することがあります。
銭湯、温泉、プール、スポーツジムなど、素足で利用する場所では注意が必要です。これらの施設を利用した後は、足を丁寧に洗い、しっかりと乾燥させましょう。
不特定多数の人が素足で利用する場所には白癬菌が存在する可能性があり、感染リスクが高まります。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・自己判断で薬の使用を中断する:症状が改善したように見えても、白癬菌が完全に死滅しているとは限りません。医師の指示なく治療を中断すると、再発する可能性が非常に高いため、必ず最後まで治療を続けましょう。
・民間療法を試す:酢やニンニクなど、科学的根拠のない民間療法は、かえって皮膚を刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。
・軽石や角質取りの使いすぎ:過度な角質ケアは皮膚を傷つけ、白癬菌が侵入しやすくなる可能性があります。
・症状がないからと放置する:かかと水虫のようにかゆみがないタイプでも、放置すると爪に感染したり、家族にうつしたりする原因になります。
よくある質問(FAQ)
水虫と診断されましたが、かゆみがありません。本当に水虫ですか?
はい、かゆみがなくても水虫(足白癬)である可能性は十分にあります。特に「角化型足白癬」と呼ばれるタイプは、足の裏やかかとがカサカサして厚くなり、ひび割れを起こすことがありますが、かゆみはほとんど感じないことが多いです。症状がないからと放置すると、爪に感染して爪水虫になったり、他の家族にうつしてしまったりする原因になります。自己判断せずに、一度皮膚科を受診し、顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認することが重要です。
白癬は冬になると治ると聞きましたが、治療しなくても大丈夫ですか?
いいえ、それは誤解です。白癬菌は高温多湿な環境を好むため、夏場に症状が悪化し、冬になるとかゆみや皮むけが落ち着くことがあります。しかし、これは菌が死滅したわけではなく、活動が不活発になるだけです。菌は皮膚の中に潜伏したままで、暖かくなると再び活動を始め、症状が再発することがほとんどです。そのため、冬場でも根気強く治療を続けることが、完治には不可欠です。
市販の水虫薬と病院で処方される薬はどこが違いますか?
市販薬と処方薬では、含まれる抗真菌成分の種類や濃度、皮膚への浸透性などが異なる場合があります。市販薬でも効果が期待できるものもありますが、白癬菌の種類によっては効果がなかったり、他の皮膚疾患(湿疹など)と見分けがつきにくかったりするため、自己判断で市販薬を使い続けると症状が悪化したり、適切な治療の機会を逃したりする可能性があります。特に、爪水虫や広範囲のたむしなど、症状が重い場合は内服薬が必要となることもあります。まずは皮膚科の受診を受けることをお勧めします。
治療期間はどれくらいかかりますか?症状がなくなったら薬をやめてもいいですか?
白癬の治療期間は、感染部位や症状の程度によって異なりますが、一般的に数週間から数ヶ月、爪白癬の場合は半年から1年程度かかります。症状がなくなったからといって自己判断で薬を中止するのは絶対に避けてください。症状が治まっても、皮膚の奥にはまだ菌が残っていることがほとんどです。医師の指示に従い、菌が完全にいなくなるまで(顕微鏡検査で陰性が確認されるまで)治療を継続することが、再発を防ぐために最も重要です。
水虫以外の足の病気と見分ける方法はありますか?
水虫に似た症状を示す他の足の病気には、足湿疹、汗疱、掌蹠膿疱症などがあります。これらの病気は見た目が似ていても、原因や治療法が全く異なります。例えば、ステロイド外用薬は湿疹には有効ですが、水虫に単独で使用するとかえって悪化させることがあります。自己判断せず、皮膚科専門医の診察を受け、顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認することが、正確な診断と適切な治療への第一歩です。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況に当てはまる場合は、一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。
足や体にかゆみを伴う赤み、水ぶくれ、皮むけなどの症状がある
足の裏やかかとがカサカサして厚くなり、ひび割れているが、かゆみはない
爪が白く濁っている、分厚くなってきた、変形してきた
股や体に円形の、かゆみを伴う発疹がある
市販薬を試したが、症状が改善しない、あるいは悪化している
ご家族に水虫やたむしの症状がある
スポーツなどで、体や頭部に原因不明の皮膚症状が出ている
自分の症状が水虫なのか、他の皮膚病なのか判断に迷う
白癬の正しい治療法や、再発予防のための日常生活の注意点について詳しく知りたい
白癬(水虫・たむし)・爪白癬は、早期に正確な診断を受け、根気強く治療を続けることで必ず改善が見込めます。当院の皮膚科専門医が、患者さん一人ひとりの症状と状況を正確に診断し、最適な治療法と生活指導をご提案いたします。「ここに来れば大丈夫」と安心していただけるよう、全力でサポートさせていただきますので、どんな些細なことでもお声がけください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医