皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
蜂窩織炎とは?
皮膚とその下の組織に起こる細菌感染症。水虫(足白癬)が原因となる場合も少なくない。
水ぶくれや内出血(紫斑)は重症化のサインです。重症化することも多く入院が必要になるケースも。
蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、皮膚の深い部分、具体的には真皮深層から皮下組織、さらには筋膜に至る範囲で細菌が感染し、急激に炎症を起こす病気です。「蜂巣炎(ほうそうえん)」とも呼ばれます。皮膚にできた小さな傷(目に見えないような傷も含め)から細菌が侵入し、増殖することで発症します。体のどの部分にも発生する可能性がありますが、特に足(すねや甲)に多く見られます。
主な症状は、患部の皮膚に現れるまだら状の強い赤み、熱感、腫れ、そして痛みです。これらの症状は急速に広がり、数時間から数日のうちに悪化することがあります。また、発熱、悪寒、倦怠感、リンパ節の腫れや痛みといった全身症状を伴うことも少なくありません。蜂窩織炎は自然に治ることはほとんどなく、放置すると細菌が血液を介して全身に広がり、敗血症や壊死性筋膜炎といった命に関わる重篤な合併症を引き起こす可能性があります。再発を繰り返すことも多いため、症状に気づいたらすぐに皮膚科医の診断を受け、適切な治療を開始することが、症状の悪化を防ぎ、重篤な合併症のリスクを減らすために非常に重要です。
蜂窩織炎の主な原因と誘発要因
ポイント
蜂窩織炎は、皮膚のバリア機能が破れた部分から細菌が侵入し、深部で増殖することで発症します。その原因菌や誘発要因は多岐にわたります。
主な原因菌
・黄色ブドウ球菌:
皮膚に常在している菌で、蜂窩織炎の最も一般的な原因菌です。
・化膿レンサ球菌(溶血性レンサ球菌):
こちらも皮膚の常在菌で、蜂窩織炎を引き起こすことが多いです。
その他、まれに他の種類の細菌によって引き起こされることもあります。
日常生活で蜂窩織炎を誘発・悪化させる要因
・皮膚の小さな傷やバリア機能の低下:
・虫刺され、擦り傷、切り傷:目に見える傷だけでなく、わずかな傷からでも細菌が侵入することがあります。
・水虫(足白癬):足の指の間がただれたり、ひび割れたりしていると、そこから細菌が侵入しやすくなり、蜂窩織炎を繰り返す大きな原因となります。
・乾燥肌、アトピー性皮膚炎:皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌が侵入しやすくなります。
・ひび割れ、あかぎれ:特に冬場の手足のひび割れなども侵入経路となり得ます。
・免疫力の低下:
・高齢者:加齢とともに免疫機能が低下するため、発症リスクが高まります。
・糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、免疫力が低下し、感染症にかかりやすく、重症化しやすい。糖尿病の方は、足のわずかな傷から蜂窩織炎に発展することが多く、特に注意が必要です。
・がんなどの基礎疾患:免疫力を低下させる病気を患っている場合、蜂窩織炎のリスクが高まります。
・ステロイド薬や免疫抑制剤の服用:これらの薬剤は免疫を抑制するため、感染症にかかりやすくなります。
・疲労、ストレス、睡眠不足:これらの要因も一時的に免疫力を低下させ、感染リスクを高めます。
・むくみ(浮腫)やリンパ浮腫:
・リンパ浮腫:がんの手術でリンパ節を切除した場合や、その他の原因でリンパ液の流れが悪くなり、慢性的にむくんでいる状態(リンパ浮腫)の方は、皮膚の防御機能が低下しており、蜂窩織炎を繰り返しやすくなります。心不全、腎不全、下肢静脈瘤などによる慢性的なむくみも、蜂窩織炎のリスクを高めます。
・肥満:
皮膚の摩擦や汗による湿潤が起こりやすく、蜂窩織炎になりやすく、また悪化しやすい傾向があります。
「蜂窩織炎は人から人へうつる病気だ」「冷やせば治る」といった誤解がありますが、蜂窩織炎は人から人へ直接うつる病気ではなく、自己判断での外用治療や冷却だけでは治りません。
蜂窩織炎の治療法
主な治療法
蜂窩織炎の治療は、原因となっている細菌を排除することが最も重要です。そのため、主に抗菌薬(抗生物質)による治療が中心となります。症状の重症度や患者さんの全身状態によって、治療法が異なります。早期に治療を開始することが、重症化や合併症を防ぐために非常に重要です。
抗菌薬の内服
軽度から中等度の蜂窩織炎の場合、主に経口の抗菌薬が処方されます。原因菌に効果のある種類の抗菌薬を、症状が改善した後も、医師から指示された期間(通常5~14日間程度)きちんと服用し続けることが非常に重要です。症状が良くなったからといって自己判断で中断すると、細菌が完全に死滅せず、再発したり、薬剤耐性菌(薬が効かなくなる菌)が発生したりするリスクがあります。
漢方薬を炎症やかゆみ、乾燥、体質改善、むくみ軽減を図る目的で処方する場合があります。
抗菌薬の点滴
炎症が強い場合、高熱を伴う場合、病変が急速に拡大している場合、飲み薬では効果が見られない場合、あるいは免疫力が低下している方(糖尿病、高齢者など)で重症化のリスクが高い場合は、入院して点滴による抗菌薬治療が必要となります。点滴によって血中濃度を高く保ち、全身に抗菌薬を行き渡らせることで、より強力に細菌を排除します。状態が安定した後は、内服薬に切り替えることもあります。
安静と患部の冷却・挙上
患部を安静にし、特に下肢(足)の場合は、足を心臓より高い位置に挙げておくことが推奨されます。炎症が強い場合は、軽く冷やすことも有効です。患部を安静にすることで炎症の拡大を防ぎ、冷却は熱感や痛みを和らげ、挙上はむくみを軽減し、患部の血流を改善することで治癒を促進します。
外科的処置(膿瘍形成の場合)
細菌感染が進んで膿が溜まっている場合(膿瘍を形成している場合)は、皮膚を切開して膿を排出する処置が必要となることがあります。
原因疾患の治療と予防
・水虫の治療:水虫が蜂窩織炎の侵入経路となっている場合は、水虫の治療を徹底することが再発予防に非常に重要です。
・リンパ浮腫の管理:リンパ浮腫がある場合は、弾性ストッキングの着用やマッサージなど、適切な管理を行うことで再発リスクを軽減できます。
・基礎疾患の管理:糖尿病などの基礎疾患がある場合は、その病気の管理を適切に行うことが、免疫力維持と蜂窩織炎の予防につながります。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、蜂窩織炎の診断と治療に関して豊富な経験と知識を持っています。患者さんの症状を正確に診断し、迅速かつ的確な治療を提供するとともに、再発予防のための生活指導も丁寧に行います。患者さんが安心して治療に取り組めるよう、きめ細やかなサポートを心がけています。
日常生活でできること・セルフケアのポイント
具体的な対策
蜂窩織炎の治療効果を高め、再発を防ぐためには、日々のセルフケアと生活習慣の見直しが非常に重要です。特に皮膚のバリア機能を守り、免疫力を維持する工夫が大切です。
皮膚の傷を放置しない・清潔に保つ
小さな傷や虫刺され、水虫など、皮膚のわずかな異常でも放置せず、適切にケアしましょう。傷ができた場合は、まず石鹸と流水で洗い、消毒して清潔な絆創膏などで保護しましょう。水虫がある場合は、かゆみがなくても皮膚科で治療を継続し、足を常に清潔で乾燥した状態に保ちましょう。アトピー性皮膚炎や乾燥肌の方は、保湿ケアを徹底し、皮膚のバリア機能を高めましょう。皮膚の小さな傷やバリア機能の低下が、細菌の侵入経路となり、蜂窩織炎の原因となるためです。
患部の安静と冷却・挙上
蜂窩織炎の症状が出ている間は、患部をできるだけ安静に保ち、炎症が強い場合は冷やしましょう。特に足にできた場合は、足を上げておくようにしましょう。患部を動かさないようにし、無理に歩いたり立ったりするのを避けましょう。冷たいタオルや保冷剤(直接皮膚に当てず、タオルなどで包んで)で患部を優しく冷やします。足を椅子に乗せる、寝るときに足元にクッションを置くなどして、心臓より高い位置に保ちましょう。安静にすることで炎症の拡大を防ぎ、冷却は痛みや熱感を和らげます。患肢を挙上することでむくみが軽減され、血行が改善し、回復を早める効果が期待できます。
バランスの取れた食生活と十分な睡眠
免疫力を高めるために、栄養バランスの取れた食事を心がけ、十分な睡眠を確保しましょう。ビタミンやミネラル、タンパク質を偏りなく摂取し、規則正しい食生活を送りましょう。睡眠不足は免疫力低下を招くため、質の良い睡眠を意識しましょう。
適度な運動と血行促進
長時間同じ姿勢を避け、適度な運動を心がけましょう。血行が悪いと感染が広がりやすくなるためです。特に、下肢のむくみがある場合は、ウォーキングや足首の曲げ伸ばし運動などが血行促進に有効です。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・自己判断で抗菌薬の使用を中断する:症状が改善しても、医師の指示なく抗菌薬を中止すると、再発したり、薬剤耐性菌が発生したりするリスクがあります。
・患部をゴシゴシ擦る・無理に潰す:皮膚を傷つけ、細菌感染を悪化させたり、膿瘍を形成したりする原因となります。
・不確かな民間療法を試す:科学的根拠のない民間療法は、かえって症状を悪化させたり、適切な治療の機会を逃したりする可能性があります。
・痛みを我慢する:痛みを我慢して放置すると、症状が急速に悪化し、入院が必要になるケースもあります。
よくある質問(FAQ)
蜂窩織炎は自然に治りますか?
いいえ、蜂窩織炎は自然に治ることはほとんどありません。皮膚の深い部分で細菌感染が起きているため、自己治癒は見込めません。症状が軽度であっても、放置すると感染が急速に拡大し、重症化するリスクがあります。赤み、腫れ、熱感、痛みが現れた場合は、迷わず早めに皮膚科を受診しましょう。
蜂窩織炎と似た病気はありますか?
はい、蜂窩織炎と症状が似ていて鑑別が必要な病気に丹毒(たんどく)があります。丹毒も細菌感染による皮膚の炎症ですが、蜂窩織炎よりも皮膚の浅い部分(真皮上層)に起こることが多く、境界がよりはっきりした赤みや腫れが特徴です。治療法は抗菌薬が中心となる点は共通していますが、診断を確定するためにも皮膚科医の診察を受けることが重要です。また、虫刺されや湿疹、じんましんなどと間違われることもあり、注意が必要です。
蜂窩織炎の治療期間はどれくらいかかりますか?
蜂窩織炎の治療期間は、症状の重症度や治療開始のタイミング、患者さんの免疫状態によって異なりますが、軽症であれば抗菌薬の内服で5日~1週間程度で改善が見られます。しかし、症状が重い場合や、治療の開始が遅れた場合、免疫力が低下している方(糖尿病など)は治療が長引き、2週間以上の治療期間や入院して点滴治療が必要となることもあります。症状が改善しても、再発を防ぐために医師の指示に従って最後まで薬を飲み切ることが非常に重要です。
蜂窩織炎は再発しやすい病気ですか?
はい、蜂窩織炎は再発しやすい病気です。特に、以下のような方は再発リスクが高いと言われています。
・水虫を治療していない方
・むくみ(特にリンパ浮腫)が慢性的にある方
・免疫力が低下している方(糖尿病など)
再発を防ぐためには、根本原因となる皮膚の傷やむくみを放置せず、きちんと治療・管理することが非常に大切です。
蜂窩織炎を放置するとどうなりますか?
蜂窩織炎を放置すると、感染が急速に広がり、重篤な合併症を引き起こすリスクがあります。
・皮膚の壊死、膿瘍形成:皮膚組織が破壊され、深い傷や膿が溜まることがあります。
・リンパ管炎、リンパ節炎:炎症がリンパ管やリンパ節に広がり、腫れや痛みを伴います。
・敗血症:細菌が血液中に入り込み、全身に広がることで、多臓器不全などを引き起こし、命に関わる非常に危険な状態になることがあります。
・壊死性筋膜炎:ごくまれに、筋肉を覆う筋膜にまで感染が広がり、急激に組織が壊死する重篤な状態に陥ることがあります。
蜂窩織炎は早期診断・早期治療が非常に重要です。
糖尿病の人が蜂窩織炎になったら、特に注意が必要ですか?
はい、糖尿病の患者さんは蜂窩織炎になった場合に特に注意が必要です。糖尿病は血糖値が高い状態が続くことで、免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなります。また、神経障害によって足の感覚が鈍くなり、小さな傷に気づきにくかったり、血行障害によって傷の治りが悪かったりします。そのため、糖尿病患者さんの蜂窩織炎は、重症化しやすく、治療が長引き、再発を繰り返すリスクが高いです。足のわずかな傷や赤みでも、放置せずにすぐに皮膚科を受診し、適切な治療とフットケアを行うことが極めて重要です。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況に当てはまる場合は、一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。
皮膚のどこかに、急に広がる赤み、腫れ、熱感、強い痛みがある
これらの症状とともに、発熱、悪寒、倦怠感などの全身症状を伴う
皮膚に小さな傷(虫刺され、水虫、ひび割れなど)がある部分から、上記のような症状が始まった
足のむくみが慢性的にあり、そこに赤みや腫れが出てきた
糖尿病、リンパ浮腫などの持病があり、蜂窩織炎の症状が出た
市販薬や自己判断で様子を見ているが、症状が悪化している
以前にも蜂窩織炎になったことがあり、再発が心配な方
蜂窩織炎の正しい治療法や、日常生活での注意点について詳しく知りたい
24時間WEB予約受付中
蜂窩織炎は、早期診断・早期治療が非常に重要です。当院の皮膚科専門医が、患者さん一人ひとりの症状と状況を正確に診断し、迅速かつ最適な治療法をご提案いたします。重症化リスクが高い場合は、必要に応じて高次医療機関との連携も検討しますので、「ここに来れば大丈夫」と安心していただけるよう、全力でサポートさせていただきます。どんな些細なことでもお声がけください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医