皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
脱毛症とは
発症早期からの治療がとても大切。
自己免疫性疾患を合併している場合もあるため、併発疾患の検索も行う
脱毛症は、正常な毛の生え変わりと比べて、毛髪が異常に抜け落ちたり、生えるべき場所から毛が生えなくなったりする状態を指す言葉です。一般的に頭髪の脱毛症が問題になることが多いですが、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛など、全身のあらゆる毛に脱毛症が生じる可能性があります。脱毛症は単一の病気を指すのではなく、その原因や症状によって様々な種類があります。
代表的なものには、円形に毛が抜ける円形脱毛症、男性に多く見られる進行性の男性型脱毛症(AGA)、女性に多いびまん性脱毛症などがあります。脱毛症は見た目の変化を伴うため、患者さんにとって精神的な負担が大きく、QOL(生活の質)を著しく低下させることも少なくありません。ただの抜け毛と自己判断せず、早期に皮膚科専門医の診断を受け、適切な治療を開始することが、症状の改善と進行の抑制、そして心のケアのために非常に重要です。
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脱毛症の主な原因と誘発要因
ポイント
脱毛症の原因は多岐にわたり、種類によって異なります。科学的根拠に基づいた主な原因と、日常生活で症状を悪化させる誘発要因を理解することが、適切な対策につながります。
主な原因
・自己免疫疾患(円形脱毛症):円形脱毛症は、自分の免疫機能が誤って毛根を攻撃してしまう「自己免疫疾患」が有力な原因と考えられています。ストレスやアトピー素因(アレルギー体質)が関連することもあります。性別や年齢に関係なく発症し、子どもにも多く見られます。
・男性ホルモンの影響(男性型脱毛症 AGA):男性型脱毛症(AGA)は、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が毛髪の成長を妨げ、毛周期(ヘアサイクル)を乱すことで進行します。遺伝的要因も大きく関与します。
・ホルモンバランスの乱れ(女性の脱毛症、産後脱毛症など):女性の場合、加齢による女性ホルモンの減少、妊娠・出産によるホルモンバランスの急激な変化(産後脱毛症)、甲状腺機能の異常などが脱毛の原因となることがあります。
・血行不良:頭皮の血行不良は、毛根に必要な栄養が行き届かなくなり、脱毛を引き起こす可能性があります。
・ストレス:急性および慢性のストレスは、自律神経の乱れや血行不良を招き、円形脱毛症や休止期脱毛症などの様々な脱毛症を誘発・悪化させることがあります。
・栄養不足:偏った食生活によるビタミン、ミネラル、タンパク質などの不足は、健康な髪の成長を妨げ、脱毛につながることがあります。
・頭皮環境の悪化:過剰な皮脂、フケ、乾燥、炎症など、頭皮の不健康な状態は毛穴を詰まらせたり、毛根にダメージを与えたりして脱毛を引き起こすことがあります(脂漏性脱毛症、粃糠性脱毛症など)。
・薬剤の副作用:一部の薬剤(抗がん剤、血圧降下剤、抗うつ剤など)の副作用として脱毛が生じることがあります。
・物理的刺激:髪を強く引っ張る髪型(ポニーテールなど)を長時間続けることで生じる「牽引性脱毛症」や、頭皮への過度な摩擦などが挙げられます。
・感染症:白癬菌(カビの一種)による頭部白癬など、頭皮の感染症が脱毛の原因となることがあります。
「脱毛症は年齢のせいだから仕方ない」「シャンプーを変えれば治る」といった誤解がありますが、脱毛症には様々な原因があり、適切な診断と治療が必要です。自己判断で対処すると、かえって悪化させてしまう可能性があるので注意が必要です。
脱毛症の治療法
主な治療法
脱毛症の治療は、その種類や原因、重症度によって大きく異なります。当院では、患者さん一人ひとりの状態を詳細に診察し、最新の知見に基づいた最適な治療計画をご提案しています。脱毛症の治療は、根気強く継続することが大切です。
薬物療法
外用薬
・ステロイド外用薬:円形脱毛症など、病状初期にまず試みる治療です。炎症を抑える目的で使用されます。ステロイドの局所注射をすることもあります。
・ミノキシジル外用薬:発毛を促進する効果があり、AGAや女性のびまん性脱毛症に広く使用されます。毛根の血流を改善し、毛周期を延長させる作用があります。
・塩化カルプロニウム(フロジン):頭皮の血行を促進し、発毛を促す目的で使用されます。
内服薬
・ステロイド内服薬:円形脱毛症の急激な進行や重症例に対して、炎症を強力に抑える目的で短期間使用されることがあります(ステロイドパルス療法など)。
・漢方薬:発毛促進、体質改善を図る目的で処方する場合があります。
・免疫抑制剤:重症で難治性の円形脱毛症に検討されることがあります。
・JAK阻害薬、バリシチニブ(オルミエント):円形脱毛症の新しい治療薬として注目されています。自己免疫反応を抑制することで、脱毛を抑制し発毛を促進します。重症の円形脱毛症で従来の治療で効果が得られない場合に適応となります。
・JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害薬、リトレシチニブ(リットフーロ):オルミエントと同様、新しい治療薬として注目されています。自己免疫反応を抑制することで、脱毛を抑制し発毛を促進します。重症の円形脱毛症で従来の治療で効果が得られない場合に適応となります。
・男性型脱毛症(AGA)治療薬:
・フィナステリド、デュタステリド:男性ホルモンの働きを阻害し、抜け毛の原因となるDHTの生成を抑えることで、薄毛の進行を抑制し、発毛を促進します。
・ミノキシジル内服薬:AGAやびまん性脱毛症に対して、発毛を促進する目的で処方されることがあります。
・ビタミン剤・サプリメント:栄養不足が原因の脱毛症や、頭皮の健康維持のために、ビタミンやミネラル(亜鉛など)の補給が推奨されることがあります。
局所免疫療法(円形脱毛症)
SADBE(スクアリン酸ジブチルエステル)やDPCP(ジフェニルシクロプロペノン)といった薬剤を脱毛部に塗布し、人工的に軽度のかぶれを起こすことで、毛根を攻撃している免疫細胞の働きを抑制し、発毛を促す治療法です。
光線療法(紫外線療法)
特定の波長の紫外線を脱毛部に照射することで、炎症を抑え、免疫反応を調整し、発毛を促します。円形脱毛症に有効な場合があります。
その他
・メソセラピー、PRP療法:頭皮に直接有効成分や自己血小板を注入することで、毛根に栄養を与え、発毛を促す治療法です。
・植毛:自毛を薄毛の部分に移植する外科的治療です。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、患者さんの脱毛症の種類や進行度を正確に診断し、最新の治療選択肢の中から、お一人おひとりに最適な治療計画を提案します。患者さんが安心して治療に取り組めるよう、丁寧な説明と継続的なサポートを心がけています。
日常生活でできる事・セルフケアのポイント
具体的な対策
正しい洗髪と頭皮ケア
低刺激なシャンプーを選び、頭皮を清潔に保ちましょう。シャンプーは泡立ててから頭皮に乗せ、指の腹を使って優しくマッサージするように洗います。ゴシゴシ擦ったり、爪を立てたりしないように注意しましょう。すすぎは時間をかけて、シャンプーやリンスの成分が頭皮に残らないようにしっかりと洗い流します。洗髪後は、タオルで優しく水気を拭き取り、ドライヤーは低温で短時間で乾かしましょう。濡れたまま放置すると、雑菌が繁殖しやすくなります。
頭皮の汚れや過剰な皮脂は毛穴を詰まらせ、頭皮環境を悪化させる原因になります。また、頭皮への強い摩擦や熱は、毛根にダメージを与え、脱毛を悪化させる可能性があります。
バランスの取れた食生活
髪の成長に必要なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)、ビタミン(特にビタミンB群、C、E)、ミネラル(亜鉛、鉄など)をバランス良く摂りましょう。偏った食事や過度なダイエットは避け、様々な食品をバランス良く摂取することを心がけましょう。高脂質・高糖質の食事は皮脂の過剰分泌につながる可能性があるため、控えめにします。
髪はケラチンというタンパク質でできており、その生成には様々な栄養素が必要です。栄養不足は髪の成長を妨げ、抜け毛の原因となります。
十分な睡眠とストレス管理
質の良い睡眠を確保し、ストレスを溜めない工夫をしましょう。毎日同じ時間に就寝・起床する習慣をつけ、寝る前のスマートフォンやパソコンの使用は控えましょう。適度な運動、趣味、リラックスできる時間を持つなど、自分に合ったストレス解消法を見つけましょう。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、髪の成長と修復に重要な役割を果たします。ストレスはホルモンバランスや血行を乱し、脱毛を悪化させる大きな要因となります。
頭皮への物理的刺激を避ける
髪を強く引っ張る髪型や、きつい帽子、ヘルメットの長時間の着用は避けましょう。ポニーテールやお団子ヘアなどは、締め付けを緩くしたり、こまめに髪型を変えたりする工夫が必要です。ブラッシングは優しく行い、濡れた髪は特にデリケートなので、無理に引っ張らないようにしましょう。
物理的な刺激や牽引力は、毛根に負担をかけ、脱毛を誘発・悪化させることがあります。
喫煙・飲酒の制限
喫煙は控え、過度な飲酒も避けましょう。
喫煙は血管を収縮させ、頭皮の血行不良を招く可能性があります。過度な飲酒も、髪に必要な栄養の吸収を妨げたり、睡眠の質を低下させたりすることがあります。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・自己判断で治療薬の使用を中断する: 症状が少し改善したからといって、医師の指示なく治療薬の使用を中断すると、再発したり悪化したりすることがよくあります。
・過度な頭皮マッサージ:強く頭皮を叩いたり、ゴシゴシ擦ったりするマッサージは、かえって頭皮にダメージを与える可能性があります。優しく指の腹でマッサージするのは血行促進に繋がりますが、力を入れすぎないように注意しましょう。
・民間療法や不確かな情報に頼る:科学的根拠のない民間療法や高額な育毛サロンに頼る前に、まずは皮膚科専門医に相談しましょう。
よくある質問(FAQ)
抜け毛がひどいのですが、何本くらい抜けると脱毛症なのでしょうか?
健康な人でも、1日に約50~100本の髪の毛が自然に抜け落ちると言われています。これは毛周期による正常な生え変わりです。しかし、1日に100本以上の抜け毛が数ヶ月以上続く場合や、明らかに髪全体のボリュームが減ってきた、特定の部位が薄くなってきたと感じる場合は、脱毛症の可能性があります。自己判断せずに、一度皮膚科専門医にご相談いただくことをお勧めします。
円形脱毛症はストレスが原因だと聞きましたが、本当ですか?
ストレスは円形脱毛症の誘発要因の一つですが、それだけではありません。近年は、自分の免疫機能が誤って毛根を攻撃してしまう「自己免疫疾患」であるという説も有力です。ストレスや疲労、アレルギー体質(アトピー素因)などが、免疫異常の引き金となる可能性が指摘されています。ストレスを完全に避けることは難しいですが、上手に管理することは治療にも役立ちます。
市販の育毛剤やシャンプーで脱毛症は治りますか?
市販の育毛剤やシャンプーは、頭皮環境を整えたり、血行を促進したりする補助的な効果は期待できますが、それだけで脱毛症を根本的に治すことは難しい場合が多いです。特に、男性型脱毛症(AGA)や円形脱毛症などの疾患が原因の場合は、医療機関で処方される専門的な治療薬が必要です。自己判断で市販品に頼りすぎず、まずは皮膚科の受診をおすすめします。
女性でも男性型脱毛症(AGA)になりますか?
女性の場合は「女性型脱毛症(FAGA)」と呼ばれ、男性のAGAとは異なる特徴があります。男性のAGAのように生え際が後退したり、頭頂部が薄くなるのではなく、頭頂部から全体的に髪が細くなり、薄くなるびまん性脱毛症の形で現れることが多いです。女性ホルモンの減少やストレス、生活習慣の乱れなどが関係していると考えられています。女性の薄毛についても、専門的な治療で改善が期待できますので、ご相談ください。
脱毛症の治療は保険が適用されますか?
脱毛症の種類によって保険適用となるか自費診療となるかが異なります。
円形脱毛症の治療は、多くの場合保険適用となります。
男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)の治療は、現在のところ保険適用外(自費診療)となることがほとんどです。
治療内容や費用については、診察時に医師・スタッフから詳しく説明させていただきますのでご安心ください。
治療期間はどれくらいかかりますか?
脱毛症の治療期間は、その種類、重症度、個人の体質、治療への反応によって大きく異なります。
円形脱毛症は数ヶ月で改善することもありますが、再発を繰り返す場合や、広範囲に及ぶ場合は年単位の治療が必要になることもあります。
男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)は、一度進行すると治療を継続しないと再発・悪化する可能性が高いため、基本的に長期間(数年単位)の継続的な治療が必要となります。
いずれの脱毛症も、根気強く治療を続けることが、良い結果につながります。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況に当てはまる場合は、一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。
抜け毛の量が明らかに増え、1日に100本以上の抜け毛が数ヶ月以上続いている
頭頂部や生え際、または特定の場所に円形や楕円形に毛が抜けた部分がある
髪全体のボリュームが減ってきた、髪の毛が細くなってきたと感じる
頭皮にかゆみ、赤み、フケ、湿疹などの症状がある
ご自身やご家族にアトピー性皮膚炎や他の自己免疫疾患の既往がある
市販の育毛剤やシャンプーを試したが、効果が見られない
脱毛症が原因で、精神的なストレスを感じている、外出を控えている
お子様の髪の毛が抜けている、または部分的に薄くなっているのが気になる
脱毛症の正しい診断を受け、最適な治療法について知りたい
脱毛症は、早期に適切な診断と治療を開始することで、進行を抑制し、発毛を促進できる可能性が高まります。当院の皮膚科専門医が、患者さん一人ひとりの状態を丁寧に診察し、最適な治療法と生活指導をご提案いたします。「ここに来れば大丈夫」と安心していただけるよう、全力でサポートさせていただきますので、どんな些細なことでもお声がけください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医