皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
やけど(熱傷)とは
熱傷は細菌感染予防と瘢痕予防対策が重要。
やけど、医学的には熱傷(ねっしょう)といい、熱によって皮膚や粘膜が損傷するケガのことです。熱湯や油、火だけでなく、熱いものに触れたり、電気、化学物質、放射線などが原因で起こることもあります。特に小さなお子さんや高齢の方では、予期せぬ事故でやけどを負ってしまうことが多いため注意が必要です。
やけどの症状は、その深さによって大きく3つの段階に分けられます。
・Ⅰ度熱傷(1度ねっしょう):
皮膚の一番外側の層(表皮)だけが損傷した状態です。皮膚が赤くなり、ヒリヒリとした痛みを伴いますが、水ぶくれはできません。数日で跡を残さずに治ることがほとんどです。
・Ⅱ度熱傷(2度ねっしょう):
表皮のさらに下の層(真皮)まで損傷が及んだ状態です。水ぶくれ(水疱)ができ、強い痛みを感じます。この水ぶくれが破れると、感染のリスクが高まります。真皮のどの深さまで損傷したかによって、浅いⅡ度熱傷と深いⅡ度熱傷に分けられ、治るまでの期間や跡の残り方が異なります。
・Ⅲ度熱傷(3度ねっしょう):
皮膚の全層が損傷し、場合によっては皮下組織や筋肉、骨にまで損傷が及んだ状態です。皮膚は白っぽくなったり、黒焦げになったり、あるいは乾燥して皮革のようになります。神経が破壊されるため、痛みを感じないこともあります。自然治癒は難しく、適切な治療を行わないと重い後遺症が残ったり、命に関わることもあります。
やけどは、放置すると感染症を引き起こしたり、皮膚のひきつれ(瘢痕拘縮)やケロイドなどの後遺症を残す可能性があります。特に小さなお子さんの場合、皮膚が薄いため重症化しやすい傾向があります。早期に適切な処置と治療を行うことが、やけどの回復を早め、きれいに治すために非常に重要です。
24時間WEB予約受付中
やけど(熱傷)の主な原因と誘発要因
ポイント
やけどの原因は多岐にわたりますが、日常生活の中に潜んでいるものがほとんどです。特に注意が必要な主な原因と、症状を悪化させる誘発要因について知っておきましょう。
主な原因
・熱湯・熱い液体:
カップ麺の熱湯、お味噌汁、コーヒー、揚げ物中の油などが原因で起こるやけどは非常に多いです。特に小さいお子さんが食卓の熱い液体に手を伸ばしてこぼしてしまったり、誤って湯沸かし器に触れてしまう事故が後を絶ちません。
・火災・直火:
ストーブや暖炉、ガスコンロの火、花火、焚き火などによるやけどです。衣服への引火や、広範囲に及ぶ重度のやけどに繋がりやすく、非常に危険です。
・高温の固体:
アイロン、ヘアアイロン、ホットプレート、オーブン、炊飯器の蒸気口、車のマフラーなどに触れて起こるやけどです。
・電気:
コンセントに差し込んだコードの破損部分に触れる、家電製品の故障などによる感電でやけどを負うことがあります。電気によるやけどは、見た目以上に皮膚の奥深くが損傷していることがあり、注意が必要です。
・化学物質:
酸性やアルカリ性の強い洗剤、バッテリー液などが皮膚に付着することで起こるやけどです。化学やけどは、洗い流すだけでは不十分な場合があり、専門的な処置が必要になります。
誘発要因
・不適切な応急処置:
やけど直後に適切に冷やさなかったり、民間療法と称して誤った処置(例:醤油を塗る、バターを塗るなど)を行うと、症状が悪化したり、感染のリスクを高める可能性があります。
・自己判断での放置:
軽いと思って自己判断で放置し、市販薬などで対処しようとすると、実は深い熱傷で重症化したり、感染症を併発してしまうことがあります。
・不衛生な環境:
水ぶくれが破れた傷口が不衛生な状態にさらされると、細菌感染を起こし、治癒が遅れたり、跡が残りやすくなります。
・摩擦や刺激:
やけどを負った皮膚に摩擦が加わったり、強い刺激を受けると、症状が悪化することがあります。
やけどは他人にうつることはありません。また、「やけどは冷やせば治る」というのも誤った情報です。適切な応急処置は非常に重要ですが、やけどの深さによっては医療機関での治療が必須となります。これらの正しい知識を持つことが、やけどの予防と早期治療に繋がります。
やけど(熱傷)の治療法
主な治療法
やけどの治療は、その深さや範囲、原因によって大きく異なります。当クリニックでは、患者さんのやけどの状態を正確に診断し、それぞれの症状に合わせた最適な治療法をご提案しています。
当クリニックでは、皮膚科専門医の院長が常駐しており、やけどの状態を的確に判断し、患者さん一人ひとりに合わせた安心できる治療を提供しています。やけどは早期の診断と適切な処置が、治り方や跡の残りに大きく影響するため、迅速な対応を心がけています。
初期の応急処置(冷却)
やけどを負ったら、まずはすぐに流水で冷やすことが最も重要です。当クリニックを受診された際も、冷やし方が不十分な場合は引き続き冷却を行います。患部を15分以上、痛みが引くまで冷やし続けることで、やけどの進行を止め、痛みを和らげることができます。
外用薬(塗り薬)
やけどの深さや状態に応じて、さまざまな種類の塗り薬を使用します。
・ステロイド外用薬:
炎症を抑え、赤みや腫れを軽減します。
・抗菌薬入りの軟膏:
細菌感染を予防したり、すでに感染している場合に治療します。
・保湿剤:
皮膚のバリア機能を回復させ、乾燥や刺激から保護します。
・被覆材(ドレッシング材):
傷口を保護し、適度な湿潤環境を保つことで、早くきれいに治す効果があります。
内服薬
やけどの痛みが強い場合や、感染が疑われる場合には、痛み止めや抗生物質を処方することがあります。
水ぶくれの処置
水ぶくれ(水疱)は、やけどの深さを示す重要なサインです。小さな水ぶくれは自然に吸収されるのを待つこともありますが、大きな水ぶくれや感染のリスクがある場合は、清潔な環境下で水ぶくれを破り、内容物を排出する処置を行います。自己判断で水ぶくれを破ると、感染のリスクが高まるため、必ず医療機関で処置を受けるようにしてください。
湿潤療法(モイストヒーリング)
傷口を乾燥させずに、適度な湿潤状態に保つことで、皮膚の再生を促し、痛みを軽減し、よりきれいに治す治療法です。
処置と経過観察
やけどの深さや治癒の過程に応じて、定期的に傷口の処置を行い、感染の有無や治り具合を確認します。
当クリニックでは、やけどの初期治療から、その後の色素沈着やケロイドなどの跡が残らないよう、丁寧なアフターケアまで一貫してサポートいたします。ご自宅でのスキンケアや処置方法についても、患者さんのライフスタイルに合わせて具体的にアドバイスさせていただきます。必要に応じて、より専門的な治療が必要な場合は、適切な医療機関へのご紹介も迅速に行いますのでご安心ください。
日常生活でできること・セルフケアのポイント
具体的な対策
やけどを負ってしまった場合、医療機関での治療はもちろん大切ですが、ご自宅での適切なセルフケアも非常に重要です。ここでは、やけどを早く治し、きれいに治すために日常生活でできることと、避けるべき点について詳しく解説します。
応急処置
やけどを負ったら、すぐに流水(水道水)で冷やしましょう。
可能であれば、患部をシャワーや蛇口から流れる冷たい水に15分以上当て続けてください。冷水が直接当たると痛い場合は、洗面器に水を張って浸す方法でも構いません。衣服の上からやけどをした場合は、無理に脱がさずに衣服ごと冷やしてください。広範囲のやけどや、お子さんの場合は、全身を冷やしすぎると体温が下がりすぎる(低体温になる)可能性があるため、注意しながら冷やしましょう。
冷却によって、やけどの進行を止め、痛みを和らげることができます。やけどは時間が経つほど熱が皮膚の奥に伝わり、損傷が深くなるため、一刻も早い冷却が重要です。
やけどの保護と清潔保持
清潔なガーゼや絆創膏、または医師の指示があった場合は専用の被覆材(ドレッシング材)で患部を保護しましょう。傷口に直接触れないように優しく貼り付けます。水ぶくれは破らないように注意し、もし破れてしまった場合は、清潔なガーゼで覆い、すぐに皮膚科を受診してください。
傷口を保護することで、細菌感染を防ぎ、摩擦や刺激から守ることができます。清潔に保つことは、治癒を早める上で不可欠です。
入浴・シャワー時の注意点
やけどをした部位は、お湯に長時間浸さないようにし、石鹸でゴシゴシ洗うのは避けましょう。シャワーで優しく流す程度にし、刺激の少ない弱酸性のボディソープなどを使用してください。湯船に浸かる場合は、患部が湯に触れないようにするか、ラップなどで保護してから入るようにしましょう。熱いお湯や摩擦は、やけどの悪化や感染の原因となることがあります。
衣類と生活環境
肌触りの良い、締め付けない素材の衣類を選びましょう。綿やシルクなど、刺激の少ない天然素材がおすすめです。傷口を圧迫しないゆったりとした服装を心がけてください。
化学繊維やきつい衣類は、摩擦や蒸れによってやけどを悪化させたり、かゆみを誘発することがあるので、注意しましょう。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・水ぶくれを自己判断で破る:
感染のリスクが非常に高まります。必ず医療機関で処置を受けてください。
・患部を不潔にする:
絆創膏を貼らずに放置したり、交換を怠ると、細菌感染のリスクが高まります。
・やけどの範囲や深さを自己判断する:
見た目以上に深い場合や、感染を併発している場合があります。特に水ぶくれができた場合や、痛みが強い場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
ご自宅でのセルフケアは、やけどの回復をサポートする上で非常に重要です。しかし、自己判断で無理をせず、少しでも不安な点があれば、お気軽に当クリニックにご相談ください。専門医が適切にサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
やけどは完治しますか?跡を残さずに治りますか?
やけどの深さによりますが、Ⅰ度熱傷(1度ねっしょう)は通常、跡を残さずに数日で完治します。浅いⅡ度熱傷(2度ねっしょう)も、適切な処置とケアを行えば、比較的きれいに治ることが多いです。しかし、深いⅡ度熱傷やⅢ度熱傷(3度ねっしょう)では、色素沈着、皮膚のひきつれ(瘢痕拘縮)、ケロイドなどの跡が残る可能性が高くなります。早期に適切な治療を開始し、医師の指示に従ってアフターケアを行うことで、跡を最小限に抑えることは可能です。
応急処置として、どれくらい冷やせばいいですか?
やけどを負ったら、すぐに流水(水道水)で15分以上、痛みが引くまで冷やし続けることが重要です。冷却によって熱の進行を止め、痛みを和らげることができます。患部を直接冷水にさらすのが難しい場合は、冷たいタオルなどで患部を覆い、タオルが温かくなったら交換するという方法でも構いません。広範囲のやけどや、小さなお子さんの場合は、体温が下がりすぎないよう、注意しながら冷やしましょう。
水ぶくれは破ってもいいですか?
水ぶくれは、自己判断で破らないでください。水ぶくれは、やけどの傷口を保護し、細菌感染から守る役割を果たしています。無理に破ると、そこから細菌が侵入し、感染症を引き起こすリスクが高まります。もし水ぶくれができてしまった場合は、清潔なガーゼなどで保護し、できるだけ早く医療機関を受診してください。医師がやけどの状態を診て、必要であれば清潔な環境下で処置を行います。
やけどをした時、市販薬を使っても大丈夫ですか?
軽いやけどであれば、市販のやけど薬や軟膏を使用することで症状が改善することもあります。しかし、水ぶくれができた場合や、痛みが強い場合、やけどの範囲が広い場合、または顔や関節など重要な部位のやけどの場合は、自己判断せずに必ず医療機関を受診してください。市販薬では対応できない深さのやけどや、感染を併発している可能性も考えられます。
子供がやけどをしました。大人のやけどと違いはありますか?
お子さんの皮膚は大人に比べて薄く、やけどが深くなりやすい傾向があります。また、体の表面積に対してやけどの範囲が少しでも広いと、重症化しやすい特徴があります。そのため、お子さんがやけどをした場合は、軽度に見えても必ず医療機関を受診してください。当クリニックでは、お子さんのやけどについても、成長段階を考慮した適切な治療とケアを提供していますのでご安心ください。
やけどの治療期間はどれくらいかかりますか?
やけどの深さや範囲によって大きく異なります。Ⅰ度熱傷は数日で治癒します。浅いⅡ度熱傷は1〜2週間程度、深いⅡ度熱傷は数週間から1ヶ月以上かかることもあります。Ⅲ度熱傷の場合は、皮膚移植などの外科的治療が必要になることもあり、数ヶ月からそれ以上の治療期間を要することがあります。治療は、やけどが治癒した後も、色素沈着や瘢痕(傷跡)のケアのために継続的に通院が必要な場合もあります。医師の指示に従って、根気強く治療を続けることが大切です。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況の場合は、自己判断せずに、できるだけ早く当クリニックにご相談ください。
水ぶくれ(水疱)ができた場合
痛みが強く、我慢できない場合
やけどの範囲が広い場合
顔、手、足、関節部、性器など、重要な部位のやけど
やけどの原因が電気や化学物質の場合
やけどをした部分が白っぽくなったり、黒焦げになったりしている場合
小さなお子さんや高齢の方がやけどを負った場合
ご自身での応急処置や市販薬で改善が見られない場合
24時間WEB予約受付中
やけどは早期の適切な診断と治療が、治りを早め、きれいに治すために非常に重要です。
「これくらいのやけどで受診してもいいのだろうか」「跡が残ったらどうしよう」など、どんな些細なことでも構いません。一人で悩まず、お気軽にご相談ください。当クリニックの皮膚科専門医が、患者さんの不安に寄り添い、最適な治療計画をご提案し、やけどの早期回復を全力でサポートいたします。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医