皮膚の病気はとても数が多く、また診察時にすべてをお話しすることは難しいため、よくある病気の説明を記載しています。当院を受診される患者様の疾患理解と治療の一助となれば幸いです。気になることがあれば診察中に医師、看護師までお声かけください。
早ければ20歳代後半から、加齢とともに増える良性の皮膚腫瘍です。
皮膚がんの可能性もあるため自己判断せずに皮膚科専門クリニックで適切な診断を受けましょう。
老人性イボは、医学的には脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)と呼ばれる良性の皮膚腫瘍です。その名の通り、加齢とともに現れることが多く、40歳代以降から増え始め、年齢を重ねるごとに数が増えたり、大きくなったりする傾向があります。ウイルス性のイボではないため、人にうつることはありません。
主な症状は、顔、首、頭、体幹(胸や背中)、手の甲など、紫外線に当たりやすい部位や皮脂腺が多い部位にできる、褐色から黒色で、少し盛り上がったシミやイボのような発疹です。表面はザラザラしていたり、油っぽい感じがしたりすることもあります。大きさは数ミリ程度の小さいものから、数センチに及ぶ大きなものまで様々です。
脂漏性角化症は、基本的に痛みやかゆみなどの症状を伴いませんが、衣服との摩擦などで炎症を起こし、かゆみが出ることがあります。また、見た目の問題で悩まれる方が多く、特に顔や首にできると老けた印象を与えることもあります。重要な点として、脂漏性角化症は良性腫瘍であり、悪性化することはほとんどありません。しかし、まれに皮膚がん(悪性黒色腫や基底細胞がんなど)と見分けがつきにくい場合があるため、自己判断せずに皮膚科専門医の診断を受けることが非常に重要です。また、脂漏性角化症が短期間で全身に多数出現し、かゆみを伴う場合はLeser-Trélat(レーザートレラ)兆候と呼ばれ、内臓に悪性腫瘍(癌)がある可能性があります。
24時間WEB予約受付中
老人性イボ・脂漏性角化症の主な原因と誘発要因
ポイント
脂漏性角化症(老人性イボ)の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複合的に関与していると考えられています。
主な原因
・加齢:
老人性イボという名前の通り、加齢が最大の原因とされています。皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)が遅くなり、古い角質やメラニン色素が排出されずに蓄積されることが関係していると考えられています。年齢とともに症例が増加することから、皮膚の老化現象の一つとされています。
・紫外線:
紫外線に当たりやすい顔、首、手の甲などに多くできることから、長年にわたる紫外線への曝露が発症の大きな誘因と考えられています。紫外線はメラニン色素の生成を促進し、皮膚細胞にダメージを与えることで、脂漏性角化症の発生に関与すると言われています。
・遺伝的要因:
家族に脂漏性角化症が多い場合、発症しやすい傾向が見られることから、遺伝的な体質も関与していると考えられています。
・摩擦や刺激:
衣服やアクセサリーなどによる慢性的な摩擦や刺激が、特定の部位に脂漏性角化症を誘発することもあります。
誘発要因(悪化させる可能性のあるもの)
・長期的な紫外線への曝露:
日常的な紫外線対策が不十分だと、既存の脂漏性角化症が大きくなったり、数が増えたりする可能性があります。
・不適切なスキンケア:
過度な摩擦や刺激を与えるスキンケア、あるいは乾燥を放置するなども、肌のバリア機能を低下させ、皮膚の老化を早める要因となり得ます。
老人性イボ・脂漏性角化症の治療法
主な治療法
脂漏性角化症(老人性イボ)は良性の腫瘍であり、基本的には治療の必要はありません。しかし、見た目の問題や、衣服との摩擦によるかゆみ・炎症がある場合、あるいは皮膚がんと鑑別が必要な場合には治療を検討します。
液体窒素による凍結療法
・方法:
-196℃の液体窒素を綿棒などで患部に直接当て、急速に凍結させて細胞を破壊する治療法です。施術中はヒリヒリとした痛みを感じることがありますが、麻酔は不要な場合が多いです。
・特徴:
治療後は患部が赤く腫れ、数日後に水ぶくれや黒いかさぶたになることもあり、1~2週間程度で自然に剥がれ落ちます。多くの場合、1回の治療で効果が見られますが、大きいものや深いものは数回繰り返す必要がある場合があります。保険適用で治療が可能です。
・メリット:
比較的簡便で、保険適用で受けられる。
・デメリット:
治療後の色素沈着(半年から2年程度で目立たなくなる)や、白く色が抜ける(脱色素斑)リスク、やけどのような症状が出ることがある。正確な深さの調整が難しいため、わずかに痕が残る可能性もあります。
炭酸ガスレーザー治療
・方法:
高出力の炭酸ガスレーザーを照射し、患部の組織を瞬時に蒸散させて除去する治療法です。局所麻酔を用いるため、施術中の痛みはほとんどありません。
・特徴:
レーザーで皮膚表面を削り取るように除去するため、周囲の組織へのダメージが少なく、出血もほとんどありません。治療後は、浅い傷になり、1~2週間でかさぶたが剥がれ、新しい皮膚が再生します。
・メリット:
傷跡が目立ちにくく、綺麗に仕上がりやすい。比較的短時間で多数のイボを除去できる。
・デメリット:
基本的に保険適用外(自費診療)となる場合が多いです。治療後の赤みや色素沈着のリスクは液体窒素より少ない傾向にありますが、ゼロではありません。
電気焼灼法
・方法:
高周波電流を流す特殊なメス(電気メス)を用いて、患部を焼き切るように除去する治療法です。局所麻酔を行います。
・特徴:
出血が少なく、効率的にイボを切除・焼灼できます。
・メリット:
比較的小さなイボから大きなイボまで対応可能。出血が少ない。
・デメリット:
レーザーと同様、自費診療となる場合が多いです。
外科的切除
・方法:
メスを用いて患部を切除し、縫合する治療法です。局所麻酔を行います。
・特徴:
他の治療法では除去が難しい大きなイボや、悪性腫瘍(皮膚がん)との鑑別が必要な場合(切除した組織を病理検査に提出するため)に選択されます。
・メリット:
病理検査で確定診断が可能。再発のリスクが低い。
・デメリット:
縫合が必要なため、傷跡が残りやすい。治療に時間がかかる場合がある。
当院では、皮膚科専門医である院長が常駐しており、脂漏性角化症の診断と治療に関して豊富な経験と知識を持っています。患者さんのイボの状態を正確に診断し、ご希望や予算も考慮しながら、自費での治療を含めて最適な治療法をご提案いたします。特に、見た目や痕について心配な場合は、詳しくご説明し、安心して治療を受けていただけるよう心がけています。
日常生活でできること・セルフケアのポイント
具体的な対策
脂漏性角化症(老人性イボ)は加齢による変化が大きいため、完全に予防することは難しいですが、日々のセルフケアで発生を抑えたり、悪化を防いだりすることは可能です。
紫外線対策
日常的に紫外線対策を行いましょう。外出時は、顔や首、手の甲など紫外線に当たりやすい部分に日焼け止めクリーム(SPF30以上、PA+++以上が目安)を塗布しましょう。帽子や日傘、長袖の衣類などを活用し、物理的に紫外線を避けることも重要です。曇りの日や冬場でも紫外線は降り注いでいるため、一年を通して対策を心がけましょう。
紫外線は皮膚細胞にダメージを与え、メラニン色素の生成を促進するため、脂漏性角化症の発生や悪化の大きな要因となります。長年の紫外線曝露が蓄積して発症すると考えられています。
保湿ケア
皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を保ちましょう。洗顔後や入浴後には、化粧水や乳液、保湿クリームなどで、顔や体全体をしっかりと保湿しましょう。乾燥しやすい部位は重ね塗りも有効です。
乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、紫外線などの外部刺激を受けやすくなります。保湿によって皮膚の健康な状態を維持し、皮膚の老化を緩やかにすることで、脂漏性角化症の発生を抑える効果が期待できます。
バランスの取れた食生活
皮膚の健康を保つために、栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。抗酸化作用のあるビタミンC(野菜、果物)、ビタミンE(ナッツ、アボカドなど)、β-カロテン(緑黄色野菜)などを積極的に摂取しましょう。加工食品や高糖質・高脂質の食事は控えめにしましょう。
食事から摂取する栄養素は、皮膚の新陳代謝や抗酸化作用に影響を与えます。バランスの取れた食事は、皮膚の老化を抑制し、健やかな肌を保つ手助けとなります。
規則正しい生活習慣
十分な睡眠をとり、ストレスを管理しましょう。毎日決まった時間に就寝・起床し、質の良い睡眠を確保しましょう。適度な運動やリラックスできる時間を作り、ストレスを上手に解消しましょう。
睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスの乱れや肌のターンオーバーの乱れにつながり、皮膚の老化を早める可能性があります。
物理的刺激を避ける
ネックレスや衣類の襟などによる摩擦を避けましょう。慢性的な摩擦や刺激は、特定の部位に脂漏性角化症を誘発する可能性があるためです。
やってはいけないこと・避けるべきこと
・自分で無理に取ろうとする:爪で引っ掻いたり、市販のハサミなどで切り取ろうとしたりすると、出血、感染、炎症、そして目立つ傷跡を残す原因となります。また、皮膚がんと見分けがついていない状態で自己処置を行うのは非常に危険です。
・不確かな民間療法を試す:科学的根拠のない民間療法は、かえって皮膚に刺激を与えたり、症状を悪化させたりする可能性があります。
・症状を放置する:良性腫瘍ではありますが、大きくなると他の皮膚がんと見分けがつきにくくなることがあります。また、見た目が気になる場合は、早めに治療を検討した方が、より綺麗に除去できることが多いです。
よくある質問(FAQ)
老人性イボとシミは違うものですか?
はい、「老人性イボ(脂漏性角化症)」と「シミ(老人性色素斑)」は異なりますが、密接に関連しています。
シミ(老人性色素斑)は、紫外線によってできる平坦な茶色い色素斑です。
老人性イボ(脂漏性角化症)は、シミ(老人性色素斑)から進展して盛り上がってくることもあれば、最初からイボ状にできることもあります。シミがイボ状に盛り上がってきたものと考えると分かりやすいかもしれません。皮膚の一番表面の細胞(表皮角化細胞)が増殖してできる良性腫瘍です。
老人性イボは自然に治りますか?
残念ながら、脂漏性角化症が自然に消えてなくなることはほとんどありません。むしろ、年齢を重ねるごとに数が増えたり、大きくなったりする傾向があります。痛みやかゆみがなければ放置しても健康上の問題はありませんが、自然治癒を期待せず、見た目が気になる場合や、大きくなってきた場合は皮膚科での治療をご検討ください。
老人性イボが急に大きくなったり、色が変わったりしたら、皮膚がんの可能性がありますか?
脂漏性角化症は良性の腫瘍であり、悪性化することは非常に稀です。しかし、皮膚がん(特に悪性黒色腫や基底細胞がんなど)の中には、見た目が脂漏性角化症に似ているものがあります。
特に以下のような変化が見られた場合は、早急に皮膚科を受診して検査を受けることを強くお勧めします。
・急激に大きくなった
・形がいびつになった
・色が不均一になった(黒っぽい部分と薄い部分があるなど)
・出血したり、潰瘍になったりした
・かゆみや痛みを伴うようになった
皮膚科専門医は、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を使って詳しく観察し、悪性の可能性がある場合は、必要に応じて一部を採取して病理検査を行います。
老人性イボの治療は保険が適用されますか?
脂漏性角化症の治療は、その目的や治療法によって保険適用になるかどうかが異なります。
医学的な必要性がある場合(かゆみや炎症がある、衣服との摩擦で出血する、皮膚がんとの鑑別が必要な場合など)は、液体窒素による凍結療法や外科的切除は保険適用となります。
美容目的での除去(見た目が気になるため)の場合、炭酸ガスレーザーや電気焼灼法などは自由診療(保険適用外)となることが多いです。
当院では、診察時に患者さんの状態とご希望を伺い、保険診療か自由診療かを明確にご説明いたしますのでご安心ください。
老人性イボは予防できますか?
加齢による変化を完全に防ぐことは難しいですが、紫外線対策は最も効果的な予防法の一つです。長年にわたる紫外線への曝露が原因の一つと考えられているため、日焼け止めや帽子、日傘などを用いて、日頃から顔、首、手の甲などの紫外線対策を徹底しましょう。また、保湿ケアで肌のバリア機能を保ち、規則正しい生活習慣で肌の健康を維持することも、発生を抑える上で有効と考えられます。
老人性イボが一度できた後、再発することはありますか?
除去した脂漏性角化症が同じ場所に「再発」することは稀ですが、別の場所に「新しいイボ」ができることはあります。これは、脂漏性角化症が加齢や紫外線などの影響で皮膚の老化現象として現れるため、時間とともに他の部位にも発生する可能性があるからです。治療後も、紫外線対策やスキンケアを継続することで、新しいイボができるのを遅らせる効果が期待できます。
このような場合はご相談ください
以下のような症状や状況に当てはまる場合は、一人で悩まず、お気軽に当院にご相談ください。
顔、首、頭、体など、体のどこかに茶色から黒色の盛り上がったシミやイボがある
そのイボが最近急に大きくなった、形がいびつになった、色が変わった
イボから出血したり、潰瘍になったりしている
イボがかゆい、または衣服との摩擦で炎症を起こす
見た目が気になり、老人性イボを除去したいと考えている
ご自身のイボが、皮膚がん(悪性黒色腫など)ではないかと心配な方
老人性イボの正しいケア方法や、予防策について詳しく知りたい
24時間WEB予約受付中
脂漏性角化症は、適切な診断と治療、そして予防策を講じることで、見た目の改善と心の安心を得ることができます。当院の皮膚科専門医が、患者さん一人ひとりの肌の状態とイボの種類を正確に診断し、最適な治療法をご提案いたします。「ここに来れば大丈夫」と安心していただけるよう、全力でサポートさせていただきますので、どんな些細なことでもお声がけください。
監修医情報
略歴
-
2003年
名古屋工業大学 卒業後
愛知県名古屋市の建築設計会社 勤務 -
2008年
琉球大学医学部 入学
-
2014年
ハートライフ病院 初期研修
-
2016年
琉球大学皮膚科 入局
皮膚科学講座助教、病棟医長を経て、 -
2023年
沖縄皮膚科医院 開業
資格・所属学会
- 日本皮膚科学会
- 日本小児皮膚科学会
- 日本アレルギー学会
- 日本美容皮膚科学会
- 日本皮膚悪性腫瘍学会
- 日本皮膚免疫アレルギー学会
- 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会認定皮膚科指導医
- 難病指導医
- 小児慢性特定疾病指定医